太陽光にアセス義務化も対象は限定的か

2018.11.30

PVeye

 環境省は、大規模な太陽光発電所の開発に環境影響評価を義務化する方向で検討している。周辺住民と事業者の摩擦を減らす狙いだが、対象の事業は限られそうだ。(PVeye記者・飯渕一樹)

 環境省が太陽光発電所開発での環境影響評価の必要性を検討し始めたのは今年5月。環境保全の観点から事業地周辺で反対運動が起こっている問題を踏まえ、検討するチームを設置した。
 同省環境影響評価課の湯本淳課長補佐は、「国会答弁で環境影響評価の必要性について質問が出たほか、1月にはメガソーラー開発で事業者と争う静岡県伊東市の関係者が当省へ要望陳述に訪れた」と背景を話す。
 7月に検討チームが発表した結果を受け、翌月に福岡大学の浅野直人名誉教授を座長とする『太陽光発電施設等に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会』が発足、11月1日までに4回にわたって検討会が開かれた。
 現在、太陽光発電所開発事業に係る環境影響評価は、自治体で独自に規定され、全国共通のルールはない。そこで、政令改正で一定規模以上の太陽光発電所開発に環境影響評価法を適用することが検討されている。施行日以降に工事計画を届け出る事業が対象となる。
第4回検討会では、開発面積100ha以上の事業を第一種事業として環境影響評価を義務づける方針が示され、太陽光発電所の規模として36MWという値を要件とすることが暫定案となった。第二種事業は第一種の75%以上の規模の事業で、審査のうえ環境影響評価義務づけの要否が判断される。
 湯本課長補佐は、「来年度早々に政令改正に漕ぎつけたい。そのうえで手引きの作成や周知のために期間を置き、施行に移る」と話す。周知期間は未定だが、一般には1年程度という。
 検討会の委員を務める桜美林大学の片谷教孝教授は、「環境影響評価制度は、環境を守りながら事業を行うよう促すことを目指す。制度上改善すべき点もあるが、私が自治体で環境影響評価の審査を担当する際も、事業運営と環境保護のバランスを意識している」と話す。

限られた対象事業

 もっとも、検討されている規模要件に合致する案件はごくわずかのようだ。
 太陽光発電所を開発するサンテックエナジーディベロップメントIPP・EMSグループの武田宏樹グループマネージャーは、「今年度の第2回入札の上限価格は15.5円だったが、この条件で100haもの山林を造成すると、とても採算が合わない」とし、「第3回入札の196.6MWという募集容量に鑑みて、規模要件に触れる案件は多くとも年間数件程度だ」と話す。
 さらに、未稼働の大型案件に対して経済産業省は10月、運転開始期限を設ける方針を示した。間に合わない事業の放棄が予想されるうえ、環境影響評価の政令改正は来年度以降となる見込みだ。環境影響評価の対象となる未稼働案件はわずかしかないだろう。
 対象案件が少ない可能性について、環境省環境影響評価課の郡島啓担当は、「今後、売電期間終了後の太陽光発電所の太陽光パネルの張り替えなどで大規模な工事があれば、環境影響評価が必要になる場合もある」との見方を示す。そのほか、桜美林大学の片谷教授によれば、「自治体の環境影響評価条例の方が厳しい条件を定めている例もあり、敢えて環境影響評価法の対象となる規模に事業を拡大する」ケースもあるという。
 日本各地にメガソーラーが建設され、地元住民とのトラブルが多く、太陽光発電に対する印象が悪化している。今回の環境影響評価制度は遅きに失したのではないか。

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