未稼働対策案に 非難轟々

2018.11.21

PVeye

 「あまりに理不尽すぎる」。11月21日、衆議院議員会館で怒声が上がった。経済産業省による未稼働案件対策の問題点を指摘する会合でのことだ。主催した発電事業大手の山佐やアフターフィットはメディア関係者を集めて、今後『再生可能エネルギー事業者協議会』を設立し、経産省へ訴えかけていく考えを示した。
 ことの発端は10月15日。経産省の専門会議で浮上した『運転開始期限のない未稼働案件に対するルール変更案』だ。
 太陽光発電所の未稼働案件は現在34GWにのぼり、高利を得ようと設備価格の下落を期待して開発を遅らせる事業者が存在。経産省はFIT法を改正して一部の案件に運開期限を設けるなど、対応策を打ってきた。
 それでも運開期限のない未稼動案件がいまだに11GWを超えており、問題は解消していない。そこで経産省は「国民負担を抑制し、新しくより効率的な案件を導入する」(山崎琢矢新エネルギー課長)とし、再び未稼動案件に規制をかける方針を固めたのである。
 具体的には、運開期限のない未稼働案件すべてに期限を設け、早期稼働が見込めないものには、事実上売電単価を引き下げる案を提示。対象になるのは2012年度~14年度の認定案件だが、1年後には15年度案件、2年後は16年度案件まで対象を拡げる考えだ。
 運開期限のない未稼動案件を抱える事業者が売電単価を維持するためには、2つの要件を満たさなければならない。第1に、19年1月末までに電力会社(送配電事業者)に連系工事着工申込みを行い、3月末までに受領してもらうこと。第2に、電力会社が決める連系開始予定日までに工事を終わらせることである。
 ただ、事業者が電力会社へ着工を申込むためには、土地使用の権限はもちろん、林地開発や農地転用等の許認可を得て、環境アセス(環境影響評価)を終えておく必要がある。認定計画に変更が生じない状態まで案件を仕込んでおかなければならないのだが、実際、林発の許認可を得るには、住民の合意などを得たうえで本申請し、その後2~3ヵ月かかる。すでに本申請していなければ間に合わないのだが、本申請まで数年かかる案件が少なくないのが実情だ。
 それだけに、EPC(設計・調達・建設)企業で開発事業も手掛ける横浜環境デザインの池田真樹社長は、「地域住民の同意を得るのは当然だが、我々は後から策定される自治体の条例を守ろうと、丁寧に準備してきた。そしてようやく林発の本申請に入るという時期にこのルール変更だ。真面目な者ほど馬鹿を見るとはこのことだ」と怒りを露わにする。
 林発同様、環境アセスにも膨大な時間がかかる。外資系ディベロッパのエクセリオジャパン新規事業開発部長の川端真児執行役員は、「環境アセスが必要な場合、それだけで少なくとも3~4年はかかる。一律に規制をかけるのは問題だ」と苦言を呈す。
 現行案では1月末までに申込みしなければならず、「せめて1年、数ヵ月でも申込み期限を延ばしてほしい」という事業者の声は多い。
 仮に1月末までに電力会社に着工を申込めたとしても、まだまだ問題はある。事業者は、電力会社が決める連系開始予定日までに工事を終えなければならないが、工事を請け負うEPC企業は運開期限のある案件で手一杯。発電設備の発注も集中するとみられ、期限までの完成は難しいのだ。
 そして、19年3月までに電力会社から着工申込みが受領されない場合、あるいは連系開始予定日までに工事が間に合わない場合は、「適正な売電単価を適用する」(経産省の山崎新エネルギー課長)との理由から、事業者は売電単価を21円/kWh以下に引き下げられてしまう。
 さらに、運開期限のルールも厳しい。期限は電力会社から連系工事着工申込みの受領をもらった日から1年間というのが現行案だ。ただし、その日が19年3月末以前の案件は一律20年3月末が期限となる。しかも運開期限を超えた場合は〝3年ルール〟と同様、月単位で売電期間が短縮されてしまうため、すでに工事を進めている案件まで座礁しかねない。
 仮に、電力会社と協議のうえ、連系予定日が21年3月に確定していた案件があったとする。この場合は、売電単価こそ維持されても、売電期間は1年短縮され、売電収入が減少するばかりか、事業者は金融機関と融資契約を締結し直さなければならない。最悪の場合、巨費を投じて着工したにもかかわらず、計画が破綻する事態が起こり得る。
 実際、すでに工事を始めているケースもあって、九州で大型メガソーラーの開発を進めるディベロッパの社長は、「工事は3割終わっているのに、金融機関から融資を停止したいと申し出があった。未稼働だからといって、すべてをルール変更の対象にするのは強引だ」と不満を隠しきれない。
 今回のルール改正案に対する批判の多くは大きく2つ。まず、売電単価が引き下げられた場合も、太陽光パネルは変更できないとして、事業者に対して適正な売電単価が適用されないこと。もうひとつは、すでに電力会社や金融機関と契約を結んで事業計画通りに進行している案件まで規制がかかることである。
 ベーカー&マッケンジー法律事務所の江口直明弁護士は、「現行のルール案で規制がかかれば、少なくとも1兆円以上の案件が失われかねない。重大な社会的混乱を引き起こす懸念もある」とし、「過去最悪の制度変更だ」と非難する。
 運転開始期限のない未稼働案件に対するルール変更案。正式なルールは12月上旬に発表される予定だ。

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