茨城県鉾田市、条例で営農用太陽光にも制限
茨城県鉾田市はこのほど、条例で太陽光発電所の開発を抑制した。農地も抑制区域と定め、事実上、営農用太陽光発電の開発も制限した。(本誌・土屋賢太)
茨城県鉾田市は2024年9月1日、『鉾田市の豊かな自然環境の保全と太陽光発電設備の適正な設置及び管理に関する条例』を施行し、市内に太陽光発電事業の禁止区域と抑制区域を設けた。具体的には、出力10kW以上の太陽光発電設備を対象に、砂防指定地や地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域、土砂災害警戒区域、土砂災害特別警戒区域を禁止区域とし、農用地や第1・2・3種農地のほか、自然環境保全地域、緑地環境保全区域、鳥獣保護区、特別保護地区、保安林などを抑制区域と定めた。抑制区域に農地を指定し、事実上、営農用太陽光発電所の開発まで制限した形である。
市内では過去に太陽光関連の大きなトラブルはなかったようだが、鉾田市生活環境課によると、「太陽光発電事業の導入拡大に伴い、土砂災害や景観への影響、野生動物の生息環境への影響が全国で相次いでおり、市民の生活環境を確保するため、条例を策定した」としつつも、「条例は、事業者に努力義務を求めるもので営農用太陽光発電を規制するものではない」としている。
エネルギー政策に詳しい一橋大学大学院経済学研究科の山下英俊准教授も、「営農用太陽光発電の実質的な許可権を持つのは農業委員会だから条例の実効性は乏しいのではないか」という。
ただ、営農用太陽光発電のコンサルティングを手掛ける千葉エコ・エネルギーの馬上丈司社長は、「適切な営農用太陽光発電は、地域脱炭素化に加え、農業の振興にも寄与するが、今回の条例で鉾田市内では営農用太陽光発電に取り組む事業者は現れないだろう。非常に残念だ」と見解を述べる。
耕作放棄地を活用した営農用太陽光発電には、太陽光発電の導入ポテンシャルがあるうえ、下部の農地で適切に営農を継続すれば、基幹産業である農業の振興にも繋がるはずだ。今回の鉾田市の条例は、行き過ぎた規制と言えるのではないか。