ボーダーレス化進む住宅太陽光発電市場
補助金申請減少も、賑わう〝全量低圧〟
住宅用太陽光発電市場のボーダーレス化が進んでいる。全量売電を活用して出力10kW以上の太陽光発電システムを設置するユーザーが増加し、今年7月より住宅用太陽光発電補助金の申込み件数が減少に転じた。メーカー各社は10kW以上50kW未満の低圧線接続用の太陽光発電システムを発売し、顧客層の獲得に動く。〝低圧〟太陽光発電市場が熱を帯びてきた。
J-PEC(太陽光発電普及拡大センター)によると、住宅用太陽光発電補助金の申込み件数が6月に2万8312件だったものが、7月に2万7550件、8月には2万4671件と減少している。
しかしその一方で、「10kW以上の引き合いは増えており、住宅用太陽光発電システムの販売施工店は、積極的に営業している」(京セラソーラーコーポレーションの戸成秀道事業推進部長)。
全量売電市場が立ち上がると10kW以上の太陽光発電設備の方が投資利回りはよい。それだけに、住宅用太陽光発電システムのユーザーの一部が全量売電へ流れたというわけだ。
特に、昨年は産業用太陽光発電の補助金が打ち切られていたため、10kW以上の太陽光発電設備を設置できるユーザーも、発電規模を抑えて住宅用太陽光発電システムとして補助金を活用するケースが多かった。つまり、10kW前後のユーザーが、今年7月を境に住宅用から全量売電に移ったのだ。
全量低圧システム続々
この動向を見据えて、早くもメーカーは、50kW未満の全量低圧市場に照準を当てシステム販売を始めた。
早かったのはソーラーフロンティア。今年7月には、50kW未満向けに『小規模発電所パック』を発売した。販売代理店を通じてシステムとして販売している。これは、自社製モジュールとパワーコンディショナ、接続箱、架台などをセットにしたもので、簡易に設置できる。FITを利用すれば、10年程度で回収できるとしている。
パナソニックESソーラーエナジー販売も、10kW以上のシステム販売を行う意向である。同社の和田泰典社長は、「当グループは、モジュールに加え、出力10kWのパワーコンディショナも用意できる。これらを組み合わせてパッケージ化した形で販売する。今後、詳細を詰めていく」という。
メーカーだけでなく、販売会社も積極的だ。住宅用太陽光発電システム卸販売大手のグリーンテックは、カナディアン・ソーラー製の50kW未満のパッケージシステムの販売に力を入れている。同社の脇章取締役経営企画部長は、「10kW以上になると、やはり投資利回りが商品の決め手。その点カナディアン・ソーラーさんのシステムは、ユーザー受けがいい。当社はこの製品を中心に販売していく」と方針を語る。
なお、全量低圧市場は販売施工店にとっても魅力があるようだ。年々利幅が抑えられる住宅用太陽光発電システムに比べ、より大型な産業用太陽光発電システムは、1件当りの販売額も大きいからだ。今後、全量低圧市場はさらに拡大する可能性が高い。