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産総研、ガラス、ポリマーフィルム、反射防止膜でPID抑制を実証

独立行政法人産業技術総合研究所太陽光発電工学研究センター(仁木栄センター長)は6月4日、成果報告会を開催し、ガラスやポリマー樹脂、反射防止膜というモジュール構成部材によって、PID劣化を抑制する実証結果などを発表した。

電圧誘起劣化と略され、短期間でパネル出力が低減する劣化現象として知られたPID。高電圧、水分、温度はじめ、カバーガラスに含有したNaや封止材の体積抵抗、あるいはセルの反射防止膜などが関連するとされるが、現象メカニズムはいまだ解明されていない。

産総研では増田淳氏を中心にメカニズム究明、そして試験法および低コストモジュールの開発を進めてきた。今回、実証されたその手法とは酸化チタン塗布ガラス、封止材、反射防止膜3つの改良によって、耐PIDモジュールをつくるというもの。

まずNaイオンの拡散に着目したのが、ガラスの内側に50〜200㎜ほどの酸化チタンを塗布するというカバーガラスの改良だ。

次に体積抵抗値によって、漏れ電流が増減してしまう封止材にもアプローチ。アイオノマー封止材を使えば、PIDが抑制できるという実証報告は世に知られるが、EVAと比べそのコスト、高剛性・高硬度の樹脂によりラミネート化でのセル割れが指摘されてきた。

そこで産総研が提唱した方法が、450μmのEVAに30μm程度の薄いアイオノマーを導入するというものだった。脱EVAではない手法によって、コストやセル割れという課題を解消できるという。さらにポリエチレン薄膜でも耐PID特性を持つ。

最後が島津製作所、長州産業との共同研究となった反射防止膜による解決法だ。通常のセル表面にはシリコンナイトライドの反射防止膜がプラズマCVDで形成されている。

この膜に漏れ電流が溜電してしまえば、出力劣化が起こってしまう。耐PID対策として最も現実的だとされるのが、この反射防止膜で、多くのメーカーが膜質や膜圧を改良する。実際、「シリコンナイトライドの膜質をシリコンリッチにすることで抑制できるが、その代償として最適な屈折率を失うため、セルの初期性能そのものを犠牲にしてしまう」(増田氏)。

そこで開発したのが、膜組成そのものは変えず、膜中の電気抵抗率だけを低減できる反射防止膜であった。さらに「従来の反射防止膜と何ら変わらないため、コストアップにもつながらない」という。

なお、反射防止膜の詳細発表は7月にも島津製作所が行なうとした。

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