[特別対談 第15回]

PVビジネスの大義

太陽光発電技術研究組合(PVTEC) 桑野幸徳名誉顧問 × ESI 土肥宏吉社長

プロフィール●桑野幸徳(くわの・ゆきのり) 1941年福岡県生まれ。63年熊本大学卒業後、三洋電機入社。93年から取締役研究開発本部長、常務取締役などを歴任し、2000~05年三洋電機代表取締役社長に就任。11年に亘ってPVTECの理事長を務め、現在、PVTEC名誉顧問、大和ハウス工業監査役、オプテックス取締役を兼務。工学博士。

土肥氏●その後、90年代には、環境問題が取り沙汰されるようになり、CO2を削減しようという動きが活発になります。そして2015年の『パリ協定』では、全196ヵ国がCO2排出削減に取り組む合意が形成されました。いまや太陽光発電には、エネルギー安全保障に加え、CO2削減という大義があります。桑野さんをはじめ、日本の太陽光発電市場を築かれた方々は、この大義があったからこそ太陽光発電の技術開発、産業振興に必死になって取り組まれたのでしょうね。

 

桑野氏●はい。太陽光発電の燃料は無尽蔵に降り注ぐ太陽光です。CO2排出はゼロだから、この太陽光発電を普及させれば、日本のエネルギー問題は解決します。それゆえ、半世紀近くもの間、国は太陽光発電を支援し続けてきたのです。

私は人類が安定してエネルギーを使い続けようとする限り、太陽光発電の大義は揺らぐことはないと信じています。だからこそ、導入速度が多少減速しても、私は太陽光発電の将来に対して全く悲観しないのです。100年以上に亘って安定した市場が形成されるに違いないと思っています。

 

土肥氏●私も同じ意見です。桑野さんのご努力のおかげで、技術革新が進み、いまや太陽光発電は競争力のある電源に成長しました。燃料費はゼロですから、間もなく、太陽光発電は最も安い電源になるでしょう。揺らぐことのない大義があり、かつ競争力のある電源を、国が、あるいは国民が、認めないわけがありません。

 

桑野氏●そのとおりです。それを踏まえて、皆さんPVビジネスに取り組んでほしいですね。事業である以上、アップダウンはあるでしょうが、将来に対して不安を抱きながら取り組むのではなく、太陽光発電の大義を胸にビジネスを進めてください。実際、FIT価格は下がったとはいえ、事業IRR(内部収益率)は5%も確保されているのです。他の投資商品と比べても、充分魅力があります。

そして今後は自家消費でしょう。日本には戸建て住宅が2700万戸ありますが、太陽光発電が設置されているのは200万戸です。仮に2700万戸の8割に太陽光発電設備を設置できれば、1戸あたり4kWとしても86GWになります。さらに66万棟の集合住宅や33.5万ヵ所の事業所のほか、公共施設や産業施設などにも導入できれば、計246GWもの潜在需要があるのです。

 

土肥氏●ドイツは1GWまで導入規模が落ち込みましたが、今年は2〜3GWまで増えるようで、そのほとんどが自家消費だそうです。日本で、FIT売電から自家消費へスムーズに移行できれば、マーケットはそれほど落ち込むことなく、健全な形で発展します。それを牽引できるのは、大義を抱いてPVビジネスに取り組む真のプロなのでしょうね。当社も心を新たにして事業に邁進していきます。今日はありがとうございました。

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