太陽光から電力小売まで

再エネベンチャー、Looopの描く未来図

太陽光ベンチャーの雄として業界を牽引してきたLooop(東京都文京区、中村創一郎社長)。再生可能エネルギーの系統制約問題が浮上するなか、次なるステージを見据える。中村創一郎社長に話を訊いた。

──太陽光業界は系統制約の話題で持ち切り。

結論が出るまではっきりと言えません。しかし一旦整理する必要があったのではないでしょうか。例えば、一つの土地に複数の電力申し込みがあったりと、ブローカーが暗躍しているケースが数多く有り現場は混乱していました。今回の動きはかなりハードでしたが、今後は整備されるルールに基づき、正当なプレイヤーが発電事業を実施できる環境が整うことを期待しています。

 

──事業への影響は。

短期的には、ほとんど影響はありません。我々は、原則として電力会社への本申請後、工事費負担金が提示された時点で着工としています。それに系統制約のないエリアはまだまだ多いですし、需要は依然として旺盛です。ただ中長期的には、連系まで要する時間が長期化し、受注までにタイムラグが生じる恐れがあるとみています。

 

──太陽光に対する厳しい意見も。

太陽光に対する厳しい意見の多くは、知らない人が雰囲気で発言しているように見えます。

私は太陽光ほどコストパフォーマンスの高いエネルギー源はないと考えています。燃料費はゼロ、CO2は排出しないので環境負荷コストも発生しない。またメンテナンスコストも少ないですし、何よりも原料を必要としない。更に国内には山林や農地も含めまだ太陽光の適地がたくさんあります。

唯一の弱点は、発電量をコントロール出来ない点ですが、蓄電し分散化することで解決可能です。今後は水素化技術もありますので、かなりの可能性があると考えています。Looopとして、信頼性、耐久性を高め、かつコストが安いシステムを提供することで、太陽光に対する厳しい見方を払拭していきたいです。

 

──コストダウンをどう進める。

太陽光の発電コストを下げるには、原料を含めた部材費、施工費の削減を図るほか、発電所のパフォーマンスを高めていく必要があります。今後は長期間発電する発電所かどうかということがポイントになり、長寿命・高耐久、メンテナンス性が高い発電所が求められます。そこで、いま我々のモジュール出力保証は25年ですが、よりタフで発電効率が落ちない製品の開発に着手しています。100年発電し続けるモジュールにチャレンジしたい。100年持つことを前提に設計すれば、20〜30年は余裕です。100年モジュールの達成には現状の経年劣化では難しいので、ここが大きな課題であると考えています。求められるのは品質ですから、コントロールしやすい国内に自社工場を構えて製品を製造する方がよい。また、原料部分、つまりシリコンインゴットから、ウェハー、セルをマネジメントすることで、品質の向上はもちろん、コストの大幅削減が可能となります。30年後は他発電方式が主流になる可能性がありますので、セカンドマーケット、具体的には東南アジアやアフリカなどに中古品として輸出することになるかもしれませんね。

 

──太陽光電源を用いた自家消費への期待も大きい。

1件単位のオフグリッドではなく、数百件をまとめた少し大掛かりな自家消費システムの提案を構想しています。屋根上に太陽光を設置するほか、近くに大きな発電所をつくって電力を供給する。エリア全体でネット・ゼロエネルギー化を実現する試みです。基本的には、エリアで自家消費し、余剰電力を売電するスキームになるでしょう。

 

──異分野への展開は。

風力はすでに実証を始めています。太陽光と同様、発電所キットの販売やEPC(設計・調達・建設)を手掛けていきます。地熱やバイオマスの具体的な話もある。大規模開発が必要であれば、複数の企業と協業していく形もありますし、一般の方々が参加しやすいよう、金融商品のように小口化する方法も模索しています。皆で再エネを育ていくという発想です。電力小売にも進出します。カギは発電量の予測と制御です。現在スキームを構築しており、具現化しつつあります。発電量の制御には蓄電池の併設が欠かせないが、課題は蓄電池のコスト。いかに経済合理性を見出せるか。その実現に向けた取組みも加速させます。

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