United Crystal Technology
技術ベンチャーUCTの新ビジネスを探る
14年4月に日本進出
企業は常に創造的破壊を続けなければ生き残れない──。経済学者ヨーゼフ・アーロイス・シュンペーターの論だ。すなわち新しい商品が生み出されれば古いものは駆逐され、その新陳代謝こそが経済発展の源泉と説く。ならばこの太陽光発電市場で安定的な地位を確立するのは、太陽電池メーカーでもなければEPC(設計・調達・建設)業者でもなく、新しいサービスを提供するベンチャー企業なのかもしれない。いま投資家から注目を集めるUCT(ユナイテッド・クリスタル・テクノロジー)はその有力候補に挙げられよう。同社の新ビジネスを探る。
UCTの設立は2013年4月。同社を率いているのは、12年までJAソーラーのCEOを務めた方朋氏である。氏は現在の市場の変化をこう説明した。
「生産能力で勝負していた時代は終焉を迎えた。スケールメリットを活かして安いモジュールを販売し続けるという不毛の争いは終わったのです。闇雲に製造コストを下げれば、品質は損なわれるし、技術開発費も賄えない。それによって不良品を世に出し、ユーザーの長期に亘る発電事業に損失を与えることになれば、メーカーの信頼は失墜してしまいます」。
「これからは技術力と品質管理体制を向上させ、ユーザーの発電事業におけるトータルのコストパフォーマンスをどう高めることができるか、これが大きなテーマです。この価値基準の転換に一部のメーカーは気がつき始めているが、ユーザーの要求を正確に把握し、それに応えていくことは容易ではありません」。
そこで方氏は新しいビジネスモデルを考案した。ユーザーのニーズをメーカーにフィードバックしてユーザーの要求を満たした製品をつくり上げることである。自社で生産するのではなく、既存のメーカーと協力体制を築いて製造委託し、既存の設備を活用して生産する。UCTはメーカーとユーザーとの間に立って、ユーザーのニーズを満たした製品をつくり、ユーザーに販売するというわけだ。
メーカーとの連携は、モジュールメーカーに止まらない。ウエハメーカーやセルメーカー、あるいはバックシートなどの関連材料メーカーからPCS(パワーコンディショナ)メーカーや架台メーカーまで広げる。
一方、ユーザーには様々な製品を販売するとともにソリューションサービスを提供する。例えば、金融機関から融資を得られないユーザーには再保険会社に加入しているモジュールメーカーの製品を提案し、初期投資を抑えたいユーザーには比較的安価なモジュールとPCS、架台で構成したシステムを提供する。
こうすればUCTはメーカーの技術や品質レベル、管理体制を把握できるうえ、市場のニーズも掴むことができる。それらを統合すれば、最も市場で受け入れられる太陽光発電システムとはどういうものか、どの材料を使ってどのように製造すれば製品化できるのか、自ずと最良の製品設計ができるようになる。これをUCTは各メーカーにフィードバックする。
メーカーにとっては合理的に生産と開発を進めることができるため、UCTとの関係構築は重要になる。UCTの市場での優位性が高まっていくのはいうまでもない。
同社は現在、モジュールの製造委託先を複数抱え、年産能力は1GWに及ぶ。販売先は中東と欧州が中心であるが、14年4月からは日本に本格展開する予定だ。
「14年は700MW〜1GW分のモジュールを販売していくつもりです。そのうち60%が日本になるでしょう。いま当社は日本での拠点開設に向け準備を進めています」。
その一方で、同社は技術開発にも余念がない。現在出荷している同社の製品は、60セル搭載の多結晶シリコン型モジュールが出力260W(変換効率約16.5%)。60セル搭載の単結晶シリコン型で同270W(変換効率約17%)であるが、これを14年年初には多結晶で変換効率17%、単結晶は同17.5%まで引き上げるという。
方氏は「当社の得意分野はモジュールの製造工程における高効率化技術。ここにおいては世界トップクラスの技術とノウハウがある。この技術のメリットは、セルから変換効率の高めるよりも遥かに製造コストを抑えることができる点です。当社がコスト競争力を保ちつつ発電効率の高いモジュールを製品化できるのはこの技術があるからです」と胸を張る。
この新しいビジネスモデルでどこまで躍進を遂げるのか。UCTから目が離せなくなってきた。