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福岡・飯塚で泥沼化するメガソーラー反対運動

2019.06.30

PVeye

 福岡県飯塚市で、太陽光発電所の建設に住民が反対している。計画が持ち上がって4年が経過したが溝は埋まらない。なぜ折り合いがつかないのか。(PVeye記者・平沢元嗣)

 件の太陽光発電所を開発しているのは、茨城県つくば市の投資会社、ノーバル・ホールディングスである。同社は、福岡県飯塚市幸袋にある約11万㎡に及ぶ捨石の集積場、〝ぼた山〞の跡地を活用して、出力50kWの低圧太陽光発電所を108基、計6MWの建設を計画。今年1月末に福岡県から林地開発許可を得て、造成工事を進めた。
 だが、近隣に住む住民が工事の中止を訴えている。というのも、建設地の西側には標高163mの白旗山があり、山麓に太陽光パネルを設置することから、傾斜地に生い茂る樹木を一部伐採する。これに対して、建設地から坂を下った先に住む住民が、土砂災害のリスクを懸念しているのだ。
 ある住民は、「大雨が降っても大丈夫か。森林があれば、水が直に流れることはないが」と不安を吐露する。
 建設地すぐ下の住宅に住む女性は、「暮らし始めた頃は緑に覆われていた。木は保水力があるので、あった方がいい。これだけ刈ってしまうと、気温も上がるのではないか」と溜息をつく。
 一方で、「太陽光発電所ができると電波障害が発生しかねない」、「周辺の気温が50度近くまで上昇するのでは」といった根拠の薄い言説を信じる住民もいる。

共産党市議が猛反対

 反対運動の経緯を辿ると、計画を立ち上げたのは、前出のノーバルではなく、地元福岡県のハウスビルダー、悠悠ホームだった。悠悠ホームは2014年年初に売電単価36円の適用を受け、経済産業省より設備認定を取得。当時はまだ禁止されていなかった分譲太陽光発電所の開発を予定していた。
 だが、近隣住民らの強い反対に遭って、4年間進展がないまま、開発を断念。その後ノーバルが18年3月に土地と権利を悠悠ホームから購入して開発を引き継いだ。ノーバルは18年6月2日に住民説明会を開催し、近隣の住民に理解を求めたが、集まった住民らの強い抗議を受け、説明を聞き入れてもらえなかったという。
 ただ、土砂災害のリスクが住民側の反対理由であるならば、そのリスクを払拭する手立てを建設的に議論する動きがあってもよさそうだ。他にもノーバルの太陽光発電所開発に反対する理由があったのだろうか。
 住民らとともに太陽光発電所建設に強く反対する日本共産党所属の川上直喜飯塚市議会議員は、「ノーバルに対し、環境保全条例13条に基づき協議を要求したが、ノーバルは応じようとしない。地域との共生を求める改正FIT法に違反している」と主張し、続けて「ノーバルは森林を伐採する前に調整池を確保すべきだったのに、先に伐採を始めた」と憤る。
 これに対しノーバルの平文俊全社長はこう説明した。
 「まず協定書の提案をいただき、問題がなければ締結させていただくと(反対住民側に)回答した。協定書の具体的な草案を(反対住民側に)求めたが、提案をいただいていない現状では何もできない。ただし、『幸袋まちづくり協議会』という地元の任意団体と当社は紳士協定を結んだ。内容は、当社は幸袋の街づくりに貢献し、協議会は当社を監督するというものだ」。
 さらに調整池に関して、平文社長は、「市による埋蔵文化財の追加調査があり、不法投棄された家庭ゴミの全量把握、正確な土質の把握と地形調査をしなければならず、伐採が必要となった。それでも土留のために除根はしていない。調整池は未完だが、代わりに沈砂地を6月13日現在で2300㎥設けた」と説明する。
 一方、白旗山ではノーバルとは別に、『アサヒ飯塚メガソーラー』という合同会社が出力23MWの太陽光発電所の建設を計画している。川上議員によれば、この案件には林地開発の手続き上、重大な問題があるようだ。
 「当時権利を保有していた一条工務店が15年、福岡県に林地開発の申請書を提出した際、当時の齋藤守史飯塚市長が街づくりの方針との整合性が図られていないとして森林審議会に意見書を提出した。だが、その意見書が別のものにすり替わっていたのだ。しかも、すり替えられた文章は、他の太陽光発電所建設に際して用いた市長の意見書のダイジェスト版と同じだった」(川上議員)。
 つまり、福岡県が意図的に市長の意見書を偽造した疑いがあるというわけだ。これが事実なら大問題だが、福岡県の林地開発の担当者は、「市長の意見書が2通あるはずがない。我々は上がってきたものを審議会の場で配布しただけだ」と疑惑を完全に否定する。

不明瞭な市の立場

 ともあれ、飯塚市のメガソーラー反対運動が泥沼化したのはなぜだろうか。
 発電事業者のノーバルは、林地開発許可を得たうえ、他の関連法も遵守している。改正FIT法の定める住民とのコミュニケーションについても、住民説明会を計2回開催し、今年3月から2ヵ月間は工事に関する質問や相談を受けつけるためのフリーダイヤルを設置するなど、住民の理解を求める努力が伺える。むろん目的は営利組織としての利益獲得であるが、持続可能な社会に向け再生可能エネルギーの普及に貢献するという正義もあるに違いない。
 だが、反対する住民にも正義はある。「再エネの普及は結構なことだが、家のすぐ傍に建設しなければならないものなのか。騒音や反射光、土砂災害も心配だが、そのリスクがないにしても、自然とともに静かに余生を送りたい」(近隣住民)。すなわち、住民の生活圏を侵してまで再エネの普及を図るというのは民主主義に反するという主張だ。そしてそんな市民の声を市政に届けるというのが川上議員の正義だろう。
 では飯塚市はどうか。市民の意見を尊重するならば、発電事業者に建設中止を促す条例を制定したり、県や国に意見書を提出したり、いくらでも手段はある。あるいは、太陽光発電所の建設を認めるのであれば、反対する住民に市の方針を示し、住民に理解を求めてもよいはずだ。
 しかし、市の農林振興課は、「福岡県が環境への影響はないと判断して林地開発の許可を出した。林地開発の許可条件違反として許可の取り消しを事業者に求めることは困難だ」とし、「事業者に対して適切な指導・監督が行われるよう県に求めていく」と語る。
 市は住民に配慮しているようでいて「県の判断に従う」のだから、事業者の開発を認める立場であるが、いかんせん歯切れが悪い。そこで「市の立場の曖昧さが事業者と住民の対立をこじらせているのではないか」と率直に伺うと、市の環境整備課は、「市はあくまで飯塚市自然環境保全条例に則った対応を行っている。立場は曖昧にしていない」と否定した。
 ともあれ、対立からは何も生まれない。争いには折り合いが必要で、仲裁する第三者の存在が欠かせない。今回のケースでは、飯塚市が仲裁役となるべきではないか。責任逃れの事なかれ主義ではいつまでも問題は解決しない。

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