メーカーの挑戦

4度の世界記録を樹立

トリナ・ソーラー、深淵のR&D

R&D(研究開発)に絶対的な自信を持つトリナ・ソーラーの技術戦略とは。

ピエール・ヴェルリンデンヴァイスプレジデント

p型単結晶セル、変換効率21.40%で世界1位、p型多結晶セル、変換効率20.53%で世界1位、p型単結晶モジュール、ピーク出力335.2Wpで世界1位。

欧・米・日の企業が名を連ねる太陽電池の世界ランキングのなかで、いま躍進著しいのがトリナ・ソーラーだ。2011年に多結晶モジュールで当時世界最高となるピーク出力274.3Wpを達成すると、12年には284.7Wpで再び世界記録を塗り替える。

14年に入ると今度は単結晶モジュールでまず4月に世界最高となる326.3Wpを記録、さらに9月には335.2Wpまで更新した。10月、11月には冒頭のp型単結晶・多結晶セルそれぞれで世界記録となる変換効率を樹立済みでもある。

その技術の核がi-PERC(industrial passivated emitter and rear cell)というセル構造にある。この構造、裏面パッシベーションとも呼ばれ、アルミニウムの層を裏面一面に張り、光の反射層も兼ねた電極とする一般的な構造に対し、i-PERCはSiNやSiO2などからなる絶縁層を裏面に形成して反射層とするもの。

この反射層があれば、裏面シリコンとアルミ電極の界面で発生したキャリア(電子と正孔)が再結合するのを抑え、変換効率を向上させるという。

トリナ・ソーラーは14年通期出荷量を3.61から3.66GWを予測し、出荷量でも世界1位となる公算が高いが、パイロット生産を終えたi-PERCセル搭載のモジュール、ハニープラス(ブランド名)が量産化することで、世界シェアのさらなるアップを狙う。

トリナのR&D責任者のピエール・ヴェルリンデンヴァイスプレジデントは「F1レーシングカーをつくるように、最新の技術を組み合わせて、新しいモジュールを開発している」と語る。

i-PERCを搭載した先のハニープラスでは、まずセルをハーフカットして、インターコネクションの損失を軽減。またセルとセル間にリフレクター(反射鏡)を導入し、失ったはずの光を吸収できる構造によって、156㎝×156㎝、セル60枚で335.2Wpを実現させた。

一方、バックコンタクト(IBC)とヘテロ接合(HJ)の研究開発も余念がない。ANU(オーストラリア国立大学)と共同開発したIBCは、2㎝角ながら24.4%に。HJも21.5%の変換効率を達成済み。

ピエール氏は2つのロードマップを描く。ひとつはハニーなどのベース技術をタンデム接合するというもの。もうひとつが、IBC+HJでタンデム接合させるもの。

「結晶系セルの理論効率は29.4%、タンデム接合は40%だが、IBC+HJでまず24%を、タンデム型で27%を目指す」とトリナのキーマンは語る。

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