中インリーが法的整理
国有企業傘下で再建か
長く経営難に陥っていた太陽光パネル製造の中・インリーが法的整理に入った。債務を整理し、再建を目指すという。中国国有企業の傘下で再始動する話も浮上している。(本誌・川副暁優)
インリー・グリーンエナジーホールディングスは2020年6月9日、日本の地方裁判所にあたる中国河北省の保定市中級人民法院に子会社インリー・エナジーの業務再構築申請を行い、受理されたと発表した。査定や監査、再編計画の素案などをもとに、債権者から合意を得たようだ。今後は裁判所が選任した管財人の監督のもと、再編計画を策定し、計画に沿って義務を遂行するという。
インリー・グリーンエナジーの王亦逾(イーユー・ワン)CFO(最高財務責任者)は、「関係当局と主要債権銀行の協力により、再編の方向性と計画が固まった」と述べている。
インリーはかつて、太陽光パネルからセルやウエハ、インゴットにとどまらず、ポリシリコン原料まで自前で生産する〝垂直統合〟を展開。10年には中国企業で初めてFIFA W杯のスポンサーとなり、12年と13年は年間のパネル出荷量で世界首位についた。
だが、太陽光パネル製造などの技術革新と競合他社による価格低減の動きは想定以上に早かった。インリーは、度重なる巨額投資の回収が遅れ、11年から赤字に転落。15年には一部負債の返済期限が迫り、債務超過に陥る。
それでも、政府系金融機関の中国開発銀行などがインリーを救済した。返済期限の延長や追加の資金注入など、異例の措置を施し、インリーは経営破綻を免れ、事業を継続してきた。
このインリーに対する異例の救済措置には、中国政府の関与があるとの見方もある。確かに、再生可能エネルギーで世界の覇権を握るべく、政府が国策として企業を育成した時期に、インリーは巨額投資を敢行した。インリーの失敗には、政府にも一定の責任があり、それゆえ政府はインリーを擁護してきたとする説である。あるいは、中国企業初のW杯スポンサーとなったインリーの企業ブランドを汚すべきではないとの意向が働いたのかもしれない。
とはいえ、いつまでも金融機関の延命措置によって事業を続けることはできないはずだ。そこで今回の法的整理に入ったのだろう。
再編計画によると、子会社インリー・エナジーの債務の多くを同社の株式に転換して債権者に譲渡するデッド・エクイティ・スワップ(債務の株式化)を実行し、債務を圧縮するようだ。そのうえで、債務の一部と未払勘定を返済するというが、債務の整理に際しては、資産の売却は避けられないだろう。河北省保定市の地価はここ数年高騰しており、土地の売却は債務の圧縮に有効な策とみられる。
ただ、インリーは、「雇用を維持し、生産と業務を続け、取引先や顧客の利益を守る」としたうえで、事業モデルを刷新し、生産ラインの改良と先進技術の向上を図る方針を示した。太陽光パネルメーカーとして事業を継続していく構えだ。
関係者の間では、インリーが中国の国有企業の傘下に入るという話もある。債務を整理した後は、新たな経営体制のもと、郊外に拠点を移すなどして、再始動させる考えのようだ。