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パネル税、市議会で可決 市と事業者の溝埋まらず

太陽光パネル税が岡山県美作市の市議会で可決された。市と事業者の溝が埋まらないまま、総務大臣の判断を仰ぐことになる。(本誌・岡田浩一)

地上に設置された太陽光パネルに対して1㎡あたり年間50円課税するという太陽光パネル税が、美作市の市議会で可決された。総務大臣の判断を経て導入されると、パネル出力1MWの太陽光発電所を運営する発電事業者は、少なくとも5年に亘って年間30万円、市に納税しなければならない。

課税は、市内の出力50‌kW以上の太陽光発電所のほか、砂防指定地や急傾斜地崩壊危険区域などの低圧太陽光発電所も対象で、既設の設備にも適用される。高圧・特別高圧発電所はパネル出力に対し、低圧太陽光発電所は認定出力に応じ、それぞれ1kWあたり300円徴収される。該当のエリアで低圧太陽光発電所を持つ発電事業者の課税額は年間最大1.5万円になる見込みだ。

この発電事業者にとって不条理なパネル税は、美作市が発案したものだが、市は水防法改正に伴う岡山県の災害想定の変更がきっかけだったという。県が2018年に吉野川流域の24時間の最大降雨量想定を従来の3倍近い600㎜程まで引き上げたため、吉野川流域の美作市では防災対策を強化する必要があったというわけだ。

ただその際、市は、雨天時に太陽光発電所からの落石が多いなどの理由こそ挙げたものの、科学的な根拠を示さないままに「太陽光発電所は流下能力に対する負荷をかけている」(萩原誠司市長)と断定し、防災対策の費用を徴収する目的でパネル税を考案した。それゆえ、なかなか市議会を通過しなかったのである。

事実、市は19年6月に市議会に議案を提出したが、必要書類が集まらず継続審査となり、19年9月、12月、20年3月の市議会でも事業者への説明不足などを理由に見送られ、20年6月には廃案にされている。9月に市は、田に設置する低圧太陽光発電所を課税の対象から外すなど内容を修正したが、なお継続審査となり、21年3月の市議会では事業者と市の見解の相違や訴訟リスクがあるなどの理由で否決されたのだ。

その後、市は6月に事業者へアンケートを実施し、9月に危険区域外の低圧太陽光発電所を課税対象から外すなど内容を緩和して議案を提出。有識者からの意見聴取が必要との理由で9月の市議会では継続審査となったが、急展開し、12月の市議会で可決された。

議員からは「防災目的とはもっともらしいが、太陽光発電所が災害を誘発するという根拠の説明が曖昧」、「防災対策を講じている事業者からも徴収するのはどうか」といった反対意見もあるが、市議会を通過したため、市は総務大臣との協議に入る。同意を得られれば、周知期間を経て23年度にも条例を施行する考えだ。

市はパネル税による税収を年間約1.1億円と見込んでおり、太陽光パネルの設置によって発生し得る防災対策費に充てるとしている。

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