埼玉のメガソーラー開発に環境省が〝待った〟
環境省がメガソーラー開発に対して初めて〝待った〟をかけた。過剰な盛土の形成や森林伐採による生態系への影響を問題視した。
環境省は2022年1月25日、埼玉県比企郡小川町で進められているメガソーラー開発に対し、計画の見直しを求めた。環境影響評価法の対象となった太陽光発電事業の見直しは、20年4月以降初めてである。
発電事業者の小川エナジー合同会社(埼玉県大里郡、加藤隆洋代表)は、埼玉県比企郡小川町の山林86haに出力39.6MWの太陽光発電所を開発する目的で17年3月にFITの認定を受けた。19年12月には埼玉県の条例に基づき関係書類を提出。20年4月に環境影響評価法の対象に30MW以上40MW未満の太陽光発電が追加されたことで国の審査に移り、21年4月に環境影響評価準備書を経済産業省に提出したという。
経産省は、この準備書と、知事意見や住民意見の概要を環境省に送り、環境省の意見を踏まえて開発の妥当性を検討するわけだが、その過程で環境省が計画の抜本見直しを求めたのだ。
問題は大きく2つ。1つは過剰な盛土の形成だ。事業者は、太陽光発電所の開発に伴う盛土の量を72万㎥とし、35.5万㎥の土砂の搬入を計画したが、盛土予定地の一部で過去に斜面崩壊があったことが確認されており、環境省は土地の調査が不充分とした。環境影響評価に詳しい法政大学社会学部の田中充教授は「21年に静岡県熱海市で土砂災害があり、盛土が原因とされた。土砂災害が増えるなか、慎重にならざるを得ないのだろう」と語る。
2つ目は、生態系への影響だ。建設予定地とその周辺では、サシバなど猛禽類の繁殖が確認され、ミゾゴイの営巣地が複数発見された。にもかかわらず、計画が森林伐採や土地を改変するものだったため、環境省は動植物の生殖・生育環境の消失が大きいと指摘した。
環境省環境大臣官房の木野修宏環境影響審査室長は、「過去の事例を見ると、環境大臣意見を勘案し取り入れる印象だが、最終的には経産省が判断する」という。吟味し、問題があれば、経産省は2月24日までに事業者へ計画修正を勧告する方向だ。