ループ、FIP太陽光向け 電力買取り開始
電力小売りのループは、FIPで開発された太陽光発電所の再エネ電力をFIT価格よりも高い固定価格で買取るサービスを始める。環境価値付き再エネ電力の調達量を増やす狙いだ。(本誌・中馬成美)
ループ(東京都台東区、中村創一郎社長)は、FIP(フィード・イン・プレミアム制度)を利用して新規に開発する太陽光発電所やFITからFIPへの移行認定を受けた太陽光発電所を対象に、電力を固定価格で買取りつつ、発電量予測や需給管理業務を請け負う新サービス、『Looop FITプレミアム』を2022年4月より開始する。
FIPのもとでは、発電事業者は電力小売り会社などに直接売電する収入に加え、市場価格と連動したプレミアム(供給促進交付金)を受け取ることができる。同社はプレミアムを発電事業者から徴収する代わりに、新規のFIP案件では電力を20年間固定価格で買取る〝疑似FIT〟を展開する。固定価格で長期の相対取引を行うことで発電事業者の収益安定化に寄与する考えだ。
発電事業者がFIPを活用して市場に売電する場合、売電収入と同時にプレミアムも変動するため、売電収入の見通しが立て難く、金融機関が融資に慎重になる懸念もある。また、FIPでは、発電事業者が発電計画の作成や提出、計画値と実績値を一致させる〝計画値同時同量〟を達成しなければならず、計画値と実績値に差分が発生すれば、差分調整に係るインバランス料金の支払いが課せられる。
そこで同社は、FIPを活用する発電事業者の予見可能性を高めるため、固定価格で電力を買取り、発電計画の作成や需給管理業務を代行してインバランス料金の負担まで請負う仕組みを構築した。
同社電力事業本部事業推進部の小川朋之部長は「FIPのリスクとリターンを当社が受け持ち、発電事業者の参入ハードルを下げ、再生可能エネルギー導入の拡大に繋げる」と語る。
FIPのプレミアムは、同年度のFIT売電単価と同等の『基準価格』から電力市場の前年度平均価格などから算出される『参照価格』を差し引いて毎月補正される。そこで同社は、新規のFIP案件に対しては、FIT売価より高値で買取り、FITからFIPに移行して発電事業を継続する案件も売電前、売電開始済みの双方をFIT認定時の売価より高値で買取る。
ループは、電力買取りとともに、FIP認定案件のEPC(設計・調達・建設)やO&M(管理・保守)にも携わる。小川部長は、「例えば電力市場価格を考慮して真南を向く発電所ではなく、夕方に発電量が増える西向きの設計や蓄電設備を併設した発電所など、収益増加を図る設計支援で経済性を高める。需給バランスの理想形を考えるうえで設計から携わる意義は大きい」と述べる。
買取り価格は、太陽光発電所の規模やエリアなどの特性を勘案し、発電所ごとに決定する。現時点では太陽光発電所のみを対象としているが、他の再エネ発電所の買取りも検討していく。対象エリアは沖縄、離島を除く全国で、個人、法人問わずサービスを展開し、向こう1年で60MWの買取りを目標に掲げる。