岡山県美作市が太陽光パネル税導入へ
二重課税との指摘も
美作市が太陽光パネル税の導入を検討している。稼働済み太陽光発電所も対象とし、パネル1kWにつき年間で約300円を徴収する方針だ。だが、二重課税との指摘もある。(本誌・岡田浩一)
美作市は太陽光パネルの設置面積に応じて太陽光発電事業者に課税する『事業用発電パネル税』の新設手続きを進めている。条例により新設できる法定外目的税で、導入されれば全国で初となる。
同市はすでに議会へ条例案を提出しており、可決されれば総務省との協議に入る。総務大臣の同意が得られれば同税創設となる。
議会の会期は6月25日までの予定だが、20日時点で条例は可決しておらず、継続審査となる可能性が高い。
同市ではここ数年で大量の太陽光発電所が建設されており、一部市民から環境への影響や、災害が起こりやすくなるのではないかという不安の声が挙がっている。そこで同市は、同税の導入を検討するに至ったが、ある国会議員は「太陽光発電所による環境への影響と、今回の話は別問題」と批判する。
同市は課税対象を出力10kW以上の地上設置型太陽光発電所の事業者とし、太陽光パネル設置面積1㎡あたり年間で50円徴収する案を策定した。一般的にパネル1kWを設置するのに6㎡が必要で、1kWあたり年300円が目安となる。
同税については、反対の声も挙がっている。6月20日には自由民主党再生可能エネルギー普及拡大議員連盟(会長・柴山昌彦文部科学大臣)が会議を開催し、同税について議論した。同会議にはベーカー&マッケンジー法律事務所の江口直明弁護士や、JPEA(太陽光発電協会)、経済産業省や総務省の担当者などが出席した。
江口弁護士は会議で「この法定外目的税は、総務大臣による法定外目的税条例不同意要件を2つ満たしている」と指摘。総務大臣は上記3つの条件に該当していなければ、条例に同意しなければならないが、江口弁護士は①と③に該当するという。①の「国税又は他の地方税と課税標準を同じくし、かつ、住民(事業者)の負担が著しく過重となること」については、すでに太陽光発電事業者には法人税、法人住民税、法人事業税が課されており、また償却資産税を払っているため二重課税になる恐れがあるということ。③の「国の経済施策に照らして適当でないこと」については、国は再生可能エネルギーの主力電源化を目指しており、特別償却などの租税特別措置を行っているにも関わらず、自治体が後から課税するということは国の税務政策の意味を減殺するというわけだ。
JPEAは、「もし今回検討されている法定外目的税が導入されると、全国の自治体に波及する恐れがある」と不安視する。
経済産業省資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部の松山泰浩部長は、「再エネの主力電源化に向けてコスト低減を進めており、障壁となるようなものは適当でない。一方で地域との共生は重要で、事業者と自治体が良好な関係を築いていかなければならない」と見解を述べた。
なお美作市の担当者は小誌の取材に対し、「まだ議会で審議している段階。税金の内容や使い道など、事業者や総務省などの意見を聞きながらしっかりと検討していく」と話した。