eye sight

不当な〝飛び地ソーラー〟に環境省が「待った」

複数の発電設備を自営線で繋いで同一の太陽光発電所と見做す〝飛び地ソーラー〟の開発に環境省が待ったをかけた。不当な開発の実態が浮き彫りになった。

事の発端は、宮城県仙台市内で計画されていた出力約40MWの太陽光発電所の開発案件が市の条例で頓挫したことに始まる。本来なら発電事業者が開発を断念して計画は白紙になるが、規模を縮小すれば開発できる点に着目した別の事業者が現れた。菅生太陽光発電合同会社(東京都港区、川端茉里奈代表社員)である。

その菅生太陽光発電は、案件を19年に引き継ぐと、出力規模を0.6‌kW、すなわち太陽光パネル1枚相当の異例な小規模開発に計画を変更する。さらに条例に抵触しない別の地域で用地を確保し、双方を自営線で繋ぐ〝飛び地ソーラー〟として開発を継続しようとした。

同社は仙台市から11km離れた宮城県柴田郡村田町に用地を確保し、20年初頭に変更認定の申請を行ったが、このとき不当な計画を目論む。村田町では40MWの大規模な開発を企て、変更認定によって36円の売電単価を得ようとしたのである。

もっとも、22年6月に同社が環境影響評価配慮書を経済産業省に提出した際、環境省が待ったをかけたが、これが通過すれば大問題だ。

そもそもFITは、社会にとって必要な再生可能エネルギーを、単価が下がるまで国民の負担で普及を支えようという制度。国民の負担軽減の観点から、毎年度の売電単価はそのときの設備価格に応じて適正に引き下げられなければならず、事業者はそのルールに従わなければならない。

今回の場合は、当初の40‌MW案件を、0.6‌kWと39.4MWに分けた飛び地ソーラーとして新たに認定を申請するか、あるいは40MWの開発案件を19年度の入札制のルールのもと、売電単価13円相当で落札するなら筋は通る。だが、菅生太陽光発電は、結果として、頓挫した案件を安く購入し、飛び地という形で不当に売電収入を得ようとした。しかもその額は200億円相当にのぼるから、200億円もの不当な賦課金を国民に支払わせようとしたわけだ。

こうした飛び地開発の問題に対し、経済産業省は20年7月にルールを改定した。現在は当初事業者が申請した地番に太陽光パネルの大半が設置されていることを条件に隣接地のみ地番の追加変更が認められているが、経産省が20年7月22日以降の申請分から新ルールを適用したため、それ以前の案件に適用されない。

これについて、再エネ関連法に詳しいベーカー&マッケンジー法律事務所の江口直明弁護士は、「飛び地に関する旧法に問題はあるが、法の遡及適用は難しい」とし、過去の案は認めざるを得ないという。

ただ今回の事案に対して、環境省は、「村田町に設置する発電設備から11kmに及ぶ自営線設置や送電で生じる温室効果ガスの排出量よりも、仙台市の太陽光パネル1枚の温室効果ガスの削減量は少ない。自営線設置に対する環境影響上の合理的な説明が必要」として見直しを求めた。環境省大臣官房環境影響評価課の浮田昂主査は、「環境影響上の合理的な説明は難しく、事業計画自体見直さざるを得ないだろう」としている。

一方、菅生太陽光発電の担当者は、今後の計画について「対応策は協議する」と言うに止め、だんまりを決め込む。不当に売電収益を得ようとした行為が、意図的だったのか、無知ゆえの過ちだったのか、不明であるが、FITを活用するのであれば、制度の趣旨を正しく理解し、ルールは守らなければならない。

環境省は、2022年8月18日、経済産業省へ環境大臣意見を提出した

eye sight を読む

一覧を見る