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FIT非化石証書が値上げ 追加性再エネの価値上昇へ

再エネ価値取引市場で取引されるFIT非化石証書の最低価格が0.1円値上げされる。一方で再エネ電源のトラッキング情報を有償化し、〝追加性〟を評価する方向でルール改定が進みそうだ。(本誌・中馬成美)

『エネルギー供給構造高度化法』によって電力小売り会社は2030年までに販売電力量に占める非化石電源比率を44%まで高めなければならない。一方、脱炭素化の潮流を背景に事業用電力の100%再生可能エネルギー化を目指す『RE100』加盟企業が増えた。そこで、電力小売り会社が高度化法の義務達成を目的に非化石証書を購入する『高度化法義務達成市場』と、企業がRE100の実現などに向け証書を調達する『再エネ価値取引市場』が創設され、証書の取引が行われている。

その証書には最低価格が決められ、高度化法義務達成市場で取引される非FIT非化石証書は1kWhあたり0.6円、再エネ価値取引市場のFIT非化石証書は同0.3円とそれぞれ設定されていたが、このほどFIT非化石証書が23年度の初回オークションから0.4円に引き上げられることになった。

もっとも、FIT非化石証書を取引する再エネ価値取引市場では、低炭素投資促進機構が証書の売り手で、証書売却で得た収入はFIT賦課金の軽減に充てられる。しかも、再エネ価値取引市場は22年の新設以降、買い手が徐々に増えていた。そこで、政府は賦課金の軽減を念頭にFIT非化石証書の最低価格を引き上げたものと思われる。

自然エネルギー財団の石田雅也シニアマネージャーは、「電力代が高騰するなか、証書を購入して再エネ化を実現するよりも、再エネ電力をPPA(電力売買契約)で調達する方が企業にはメリットがある。最低価格の値上げは、PPA需要を押し上げる方向に働きそうだ」と語る。

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