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環境配慮基準 相次ぎ策定

〝再エネ特区〟拡大か

地域の〝再生可能エネルギー特区〟を決める際の基準となる環境配慮基準の策定が進み始めた。再エネの導入が加速するかもしれない。(本誌・中馬成美)

政府は2022年4月に改正地球温暖化対策推進法を施行し、市町村の裁量で再生可能エネルギーの『促進区域』を定める〝特区制〟を導入。同区域内の再エネ事業を『地域脱炭素化促進事業』と定め、発電事業者の様々な法手続きを免除した。

発電事業者は市町村に認定されれば、自然公園法などによる許可手続きを一元化できるほか、環境アセスメント法に基づく配慮書の申請を省略できる。関係者間の合意形成を円滑に進められるため、効率よく再エネ発電所を開発できる。

だが、促進区域はまだ少ない。22年7月に長野県箕輪町が、同年10月に神奈川県小田原市がそれぞれ促進区域を定めたほか、20ほどの市町村が策定を検討しているものの、実際に促進区域を定めた市町村は僅かである。

もっとも、促進区域の設定には、適地を選ぶゾーニングが不可欠だ。国の省令のほか、都道府県が定める環境配慮基準に則して区域を定める必要があるだけに、都道府県の環境配慮基準の策定を待つ市町村が多いのである。

この状況下、22年5月に長野県が全国に先駆けて環境配慮基準を策定すると、同年7月に徳島県も同基準を設けた。北海道や宮城県、福島県、富山県、京都府、愛知県、福岡県、長崎県も基準の策定に動いており、22年3月から4月にかけて環境配慮基準の策定が進みそうだ。

たとえば、長崎県は、『第2次長崎県地球温暖化(気候変動)対策実行計画』の別冊で環境配慮基準を策定予定で、23年4月1日から運用する。22年6月から県下21の市町に意向調査を実施したところ、7割にあたる15の市町で県の環境配慮基準を求めていることが判明し、基準の策定に動いたという。

長崎県は、平坦地に乏しく、多くの離島を有する地形ゆえ、再エネ設備の設置可能な適地が少ないが、『ゼロカーボンシティ』を表明しており、脱炭素化を進めていかなければならない。それだけに、長崎県県民生活環境部の地域環境課は、「脱炭素化の実現に向け、関係者との合意形成を図って再エネの導入を進めていく」と意欲的だ。

長崎県は、促進区域の対象事業を太陽光発電と風力発電としたうえで、急傾斜地崩壊危険区域や土砂災害特別警戒区域などを促進区域から除外した。さらに、住宅や学校、図書館などのある区域は配慮の必要な区域としつつ、教育関連施設や公共建築物、工場などのある区域を、優先的に太陽光発電事業を促進する区域と定めた。

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