神戸市、勇み足の太陽光発電所規制
根拠は薄弱
ところが、実は太陽光発電所の存在が崩落を招いたという根拠は明確ではない。
神戸市環境局環境貢献都市課の八木実環境計画・エネルギー政策担当課長は、「少なくとも太陽光パネルの乗っていた場所が崩落して公共交通機関を止めたことは事実で、何らかの対策が要る」と条例の必要性を強調しつつも、「事故後すぐに現場が整地されてしまったこともあり、施工方法に問題があったか否かは検証できていない。今後も検証を試みる予定はない」と話す。
過去に太陽光発電設備が原因と認められる事故は同市内で報告されておらず、今回の事故についても、市民から苦情や条例制定を求める声は特段ないようだ。
さらに、被害を受けたJR西東京広報室の杉本伸明課長は、「今回は異例の豪雨があった。太陽光発電自体の問題ではなく、家などが建っていても状況は同じだったのでは」とし、「事故現場の整地費用の負担を発電事業者と交渉中だが、運休による損害について事業者の責任を問うつもりはない」と語る。
近年、確かに太陽光発電にまつわる揉め事や事故が世間の耳目を集めている。だが、条例の施行とは、行政機関が国民生活に規制をかける行為だ。しかも、骨子が掲げる交通インフラ沿いの建設規制に類する規定は、住宅などの施設にはなく、漠然とした根拠の下で太陽光発電設備だけを規制することになる。安易な条例制定は厳に慎むべきだ。
崩落した太陽光発電所の施主兼発電事業者である別府工務店(兵庫県尼崎市、別府建一社長)は、一貫して本誌の取材に応じない。責任の有無はともあれ、災害の多発する昨今、同様の事態は他の発電所でも起こり得る。業界の糧とするためにも、広く事情を打ち明けることは、事故の当事者としての責務ではないだろうか。