市議会で6度見送りも
美作市長、パネル税に意欲
「法的・科学的根拠を」
この状況を事業者はどう見ているのか。たとえば、美作市内で2ヵ所、計300MWのメガソーラーを運営するパシフィコ・エナジーは、パネル税が導入されると、毎年約8700万円の税金を徴収されかねない。事後的な課税ゆえ、借入金の返済や事業計画に少なからず影響が出るはずだ。
同社の松尾大樹社長は、「当社は、作東で地元の要望を聞き入れ調整池の容量を合計で県基準の1.8倍にし、市と事前に実施協定を結び、県からは林地開発許可や県土保全条例の開発許可を得た。必要な手続きはすべて行ったが、事業開始後に、水防法改正という直接因果関係のない事由を元に新たな基準を作るのは不適切ではないか。水防法は『避難警報を出さないといけない基準』で、事業者として遵守せねばならぬ防災基準には一切影響ないと県にも確認済みだ」という。
つまり、同社が岡山県から得た防災に係る許認可は、県の避難に係る基準の変更による影響を受けないのではないかという疑問であろう。ただ少なくとも、岡山県県民生活部中山間・地域振興課は、「(仮に開発許可における防災対策の技術基準が後に変わっても)許可を出した時点の技術要件が適用される。原則、過去に遡及することはない」としている。
では市はどうか。もっとも、市は、林地開発許可は不要と国が判断した地上設置型の低圧太陽光発電所まで原則パネル税の対象にするつもりである。「たとえ小規模でも一部を除き太陽光発電所の建設は少なからず環境に負荷をかけている」(萩原市長)と見るからだが、ならば、その根拠を具体的に示してほしいというのが事業者の要望だ。
実際、太陽光発電協会が20年9月にパネル税に関して事業者に調査を行うと、「パネル税の詳細について納得のいく説明をしてほしい」という意見が多く挙がった。パシフィコ・エナジーの松尾社長も、「太陽光発電所の運営による環境負荷が財政需要を生んでいるならば、その科学的根拠を示してほしい」と訴える。
むろん、一定の科学的根拠がないなかで市がパネル税を導入することなど決してないはずだ。そのようなことをすれば、パネル税はお門違いの税制となるばかりか、市は不当に税を徴収するというあるまじき行為に手を染めることになる。
ともあれ、このパネル税の一件に関しては、市が事業者に説明し、意見を伺うよりも、信憑性のあるエビデンスをまず提示するべきではないだろうか。