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伊豆メガソーラー問題

漁業関係者ら、建設差止め要求 仮処分申立て

事業者と住民の対立が続く静岡県伊東市のメガソーラー問題で、地元の漁協、スキューバダイビング事業者らが3月28日、発電所の建設差止めを求める仮処分を静岡地方裁判所沼津支部に申立てた。申立人らは、漁業や営業権の侵害を訴えている。

計画は、韓ハンファグループのハンファエナジーと、再生可能エネルギー設備商社のシリコンバンクの出資を受けた『伊豆メガソーラーパーク合同会社』が、伊東市八幡野区の山林100haに太陽光パネルを1万枚、計40MW敷設するというもの。小野達也現伊東市長が昨年の選挙で計画に反対を表明して当選し、以来市民の注目を集めた。景観の悪化や自然破壊、豪雨による土砂崩れの危険性を懸念した地元住民らを中心に反対運動が熱を帯びた。

事業者は市内各所で繰り返し説明会を開くも、住民の理解は得られず、反対運動はついに裁判に発展した。

静岡地裁沼津支部に建設差止めの仮処分を申し立てたのは、市内で漁業やスキューバダイビング事業を営む有志21名だ。申立人らは、メガソーラーの建設によって漁業権や営業権等の侵害を受けると訴える。

申立人の1人で、いとう漁協協同組合の理事を務める稲葉功氏は、建設予定地からほど近い港を拠点に漁業を営んでいる。そんな稲葉氏は昨年から港のある変化が気になり始めたという。「雨が降ったあと川からの水量が増え、土砂や木くずが大量に流れ出るようになった。船のエンジンをかけると木くずを吸い込んでしまうので、漁師は海に出られず、水が濁っている間はダイビングも難しい」。

気になった稲葉氏が原因を探るべく川をたどって山の方へ向かうと、急峻な斜面に立つ発電所を見つけた。この太陽光発電所は伊豆メガソーラーパークの所有物ではなく、したがって海に土砂や木くずが大量に流れ着いた事態と伊豆メガソーラーパークとは何の関係もない。とはいえ計画中の発電所はこの何十倍もの大きさであり、メガソーラーによって生活が脅かされる恐れがあるとなれば居ても立っても居られないだろう。稲葉氏は事業者と意見交換を重ねたが、説明に最後まで納得がいかず、建設差止めを求める仮処分の申請を決めたという。

ただ、伊豆メガソーラーパークが、土砂の流入や水量の増加に対して何の対策も講じず、説明責任を放棄してきたわけではない。事業者側は「太陽光発電所の建設によって漁師やダイバーの生活に悪影響が生じてはならない」と強調、大型調整池の設置で、漁業従事者やダイバーの不安を解消するという。大小それぞれ2ヵ所ずつ、計4ヵ所の調整池を設ける予定で、大型調整池は、縦250m×横50m×深さ5mもある巨大なものだ。しかもろ過装置を取り付け、浄水した上で川に放水する。また一部川の改修を手掛け、港の環境改善に尽力するという。これにより、事業者は「メガソーラー建設によって木くずや土砂が海に流れ込む事態はあり得ない」と説く。

話し合いが平行線をたどるなか、市は2月14日、宅地造成等規制法に基づく事業者の申請を許可した。県の林地開発許可がおりれば、建設が始まる段階まで計画は進んだ。県は3月14日、林地開発許可申請に伴う林発審議会を開催したが、継続審議となって閉会。4月5日の第2回においてもやはり継続審議だった。次回の審議会は未定である。

「林発許可が下り次第着工したい」と話す伊豆メガソーラーパークの担当者。その顔には焦りが浮かぶ。というのもこのプロジェクトには改正FIT法に基づく運転開始期限が設定されているのだ。2020年3月までに売電を始めなければ、以降1月単位で売電期間が短くなってしまう。

今後、申立人と事業者は4月下旬に審尋、すなわち裁判官との面談を行う。双方の審尋を経て、裁判所は仮処分命令の発令を決める。その決定は数ヵ月後になるようだ。裁判所が決定を下す前に県が林地開発許可を与えた場合、事業者は着工可能である。伊豆メガソーラーパークの担当者は「必要な書類を提出すれば、仮処分命令は下されないだろう」と話した。

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