国内最大メガソーラー稼働へ
建設順調、住民の理解進む
くにうみアセットマネジメントが開発してきた岡山県のメガソーラー計画が実を結びそうだ。2月より試運転を開始し、秋にも商業運転に入る。完工した案件では国内最大だ。開発は問題なく進んだのか。
このほど完工した『瀬戸内Kirei太陽光発電所』は岡山県瀬戸内市に位置する。500haもの塩田跡地を瀬戸内市より賃借し、うち230haに太陽光パネル90万枚を設置。パネル出力は235MWに達し、総事業費は1100億円だ。
くにうみアセットマネジメントが開発事業者となり、東洋エンジニアリングと清水建設がEPC(設計・調達・建設)で、中電工がO&M(運用・保守)で参画。
事業用地の錦海塩田跡地は、錦海塩業が製塩のために湾を干拓したものだ。しかし、1971年の第4次塩業整理で塩田事業は廃止。同社は塩田跡を産廃処分場として使用したが、2009年に倒産した。
だが、塩田跡地の排水が滞ると、周辺への浸水の恐れがある。結局は10年に瀬戸内市が塩田跡地を取得し、排水設備も引き継いだ。市は翌年、メガソーラー導入を盛り込んだ土地活用方針を設定。計画案の公募で、くにうみアセットマネジメントを選んだ。
瀬戸内市役所産業建設部建設課の山内桂三参事は、「当初は塩田跡地のほぼ全面が事業用地だったが、県と市、事業者で自然保護協定を締結。面積の45%をそのまま残した」と話す。
また、塩田跡地と海を隔てる堤防や、排水設備の整備工事を事業者が負担。市へ無償譲渡した。
14年に始まった建設工事は順調に進んだようだ。
東洋エンジニアリングのインフラ事業本部インフラプロジェクト本部の生出富久夫担当部長は、「融資締結までに議論が尽くされ、工事開始後に新たな問題は生じなかった」とし、「大規模な事業ゆえ、僅かなミスも大きく影響する。その点は気を遣った」という。
パネル設置なども担った中電工の伊藤聖彦取締役は、「工事期間中にも設置済みパネルが劣化するので、300人余りの作業員を投入し、極力短時間での施工を要した」と話す。
また、地域住民への説明について、くにうみアセットマネジメントのアセットマネジメント事業本部の齋藤信子本部長は、「工事状況を伝える広報を毎月作成し、住民に配るなど、密な情報共有を図った」と語る。
現場近くに住む男性は、「確かに広報がきていた。首尾よく完成したなら良かったのではないか」と述べ、同じく近隣の女性は、「作業員の統制が取れていて、感心だった」という。
ただ、日本野鳥の会・岡山支部の丸山健司氏は、「塩田跡地は絶滅危惧種の鷹、チュウヒの繁殖地だ。ここ数年は数が減り、16年からは繁殖行動も見られない」と、工事の影響を危惧。作業の直接的影響のほか、餌となる動物の種類が変わったことも指摘する。
しかし、事業者側も対策は講じてきた。東洋エンジニアリングの生出担当部長は、「保全区域では年間6ヵ月は作業を控え、繁殖期にはその周辺も含めて作業を止めた」とし、くにうみアセットマネジメントの齋藤本部長は、「事業地外の敷地のうち16haを特に自然保護区域とし、環境を整備している」という。
同社の山﨑養世社長は、「今回の事業ほど環境に配慮した例は他にないだろう」とし、「この場所が海底だった頃には鳥などおらず、塩田時代には無生物だった。我々は自然保護区域を作り、生物多様性の向上に貢献している」と強調した。
いずれにせよ、発電所は無事完成した。事業者と瀬戸内市は、発電所を軸とした観光開発も構想しており、市に大きな利益をもたらすかもしれない。