未稼働4.2GWが認定失効
系統の〝空押さえ〟解消か
経産省は2023年6月21日、未稼働の太陽光発電所の開発案件のうち4.2GWのFIT認定を失効させたと公表した。電力系統の〝空押さえ〟が解消し、系統制約がやや改善に向かうかもしれない。(本誌・土屋賢太)
FIT認定の失効は、FITの認定を取得した日から原則3年を過ぎても稼働しない未稼働案件に対して強制的に行われる仕組みである。2022年4月に施行された認定失効制度に基づき、経済産業省は23年4月1日、5.3万件、4.2GWに及ぶ太陽光発電所の未稼働案件のFIT認定を失効させた。認定失効後、経産省は一般送配電事業者に通達し、一般送配電事業者は失効案件の系統接続契約を解消する。
再生可能エネルギーの法律に詳しいベーカー&マッケンジー法律事務所の江口直明弁護士は、「失効案件のほとんどが低圧太陽光発電所の未稼働案件だろう」としたうえで、「系統制約が課題だけに未稼働案件の失効は妥当だ」と見解を述べた。
稼働していないとはいえ、開発業者は電力会社と電力系統へ接続する契約を結ぶため、いわば系統を〝空押さえ〟している。系統の空き容量が課題で、再エネ発電所の新規開発が難航している状況下、長く開発できず、運転開始の目途がたたない案件は失効されるべきだろう。
むろん、未稼働案件を抱える事業者にも開発できない相応の理由があるようだ。太陽光発電所を開発するゼックは、今回の認定失効で、茨城県内の低圧太陽光発電所14件と高圧太陽光発電所1件の計約1.5MWの未稼働案件が失効された。同社の柳川勇夫社長は、「FIT認定を取得した時点では、地主から土地を借りる承諾を得ていたが、東京電力パワーグリッドによる送電線の増強工事で長く着工できず、土地の貸借契約を結べなかった」とし、「失効案件は全て地域との合意が形成されていただけに頓挫する形となり、残念だ」と語る。
一方、未稼働案件ながら失効に至らなかった案件もある。22年4月の認定失効制度施行日から1年以内に事業者が系統連系工事申込みを行えば、失効まで3年の猶予期間が与えられるのだ。実際、再エネ系IPP(独立系発電事業者)のパシフィコ・エナジーは、未稼働案件を抱えつつも、系統連系工事着工申込書を提出して失効を免れた。出力85MWの兵庫県三田市の案件は23年内の商業運転を予定しているようで、同社の水田洋一郎アセットマネジメント部門長は、「地域住民から合意が得られたので問題はない。適正に再エネ開発を継続していく」と述べた。
このほか、認定失効には特別措置がある。出力2MW以上の特別高圧太陽光発電所の開発案件で工事計画届が受理されていれば、FIT売電期間の20年間が考慮され、42年4月1日まで失効されないのだ。
この状況下、最近は認定失効前に自ら事業の廃止手続きを申請する事業者が出てきた。失効前に廃止手続きをすれば、系統接続契約は自動的に解約されないため、なかには〝非FIT〟太陽光発電所の開発や系統用蓄電事業に切り替えて再開発しようと目論む者があるのかもしれない。
ともあれ、経産省は今後も未稼働案件のFIT認定を失効させる予定だ。23年度は約1.2万件、約0.8GWの未稼働案件が失効されるとみられる。