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蓄電池補助が幻に 財務省判断で予算化ならず

環境省は2019年問題への対応策として18年度予算で蓄電池補助金を概算要求していたが、最終的な予算案に残らなかった。住宅用蓄電池の普及の後押しになると期待されていた補助金が露と消えてしまった。(本誌・楓崇志、岡田浩一)

政府は12月22日、18年度予算案を閣議決定した。環境省の最終的な予算案を見ると、昨年8月の概算要求時にあった『太陽光発電の自立化に向けた家庭用蓄電・蓄熱導入事業』の文字がない。実は財務省との折衝で消えてしまったのだ。

同事業は、住宅用蓄電池と自然冷媒などを用いた蓄熱設備に対する補助金。買取り期間が終了する住宅用太陽光発電設備を自家消費に移行し、継続利用を促すことで、温室効果ガス排出量の削減目標の達成を後押しすることが目的だった。2年で総額84億円の新規事業として、環境省が新たに18年度予算案に概算要求していたのだ。

いわゆる19年問題への対策を目的とした事業であり、蓄電池単体の補助事業としては3年ぶりで約3万台の需要創出が見込まれるなど、関係者からの期待も高かった。だが、財務省との折衝を経て、最終的に予算化されなかった。なぜなのか。

市場で価格低減が進み、安価な蓄電池がすでに登場していることが最大の要因のようだ。

筆頭格は米テスラの住宅用蓄電池『パワーウォール』だろう。同社は日本向けのホームページ上に蓄電容量13.5kWhの蓄電池の本体価格を69.6万円と掲載。現在の国内相場kWhあたり15~20万円に対し、5.1万円だ。安さが際立っている。

ただし、テスラの住宅用蓄電池については購入を検討している販売店などから「試しに予約したところ、設置まで2年かかるといわれ、購入を諦めた」、「設置工事費は当初7万円とされていたが、実際は2倍以上かかった」といった声も聞こえてくる。

ある日系メーカーは、「安さだけを追求した1社のために3万台規模の補助金がなくなってしまった。市場にとって本当に良かったのか」と憤りを隠さない。

とはいえ、蓄電池に対する補助はゼロではない。別事業に蓄電池補助金が組み込まれた。『高性能建材による住宅の断熱リフォーム事業』である。

ただし、既設住宅での高機能建材の導入が前提で、蓄電池は自家消費を優先した運転とすることが要件。蓄電池補助の効果は期待しにくい。来年度もこの2年と同様に補助金なしでの販売が主流となりそうだ。

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