eye sight

環境省補助金の蓄電設備、設計に不備

自治体36事業が改修対象に

環境省の補助金で自治体が設置した蓄電設備に不備があった。会計検査院の調査によると、36事業にのぼった。同院は10月24日に公表。自治体の不注意や認識不足を主因とみる。一方、環境省の説明不足を指摘する声もある。

環境省は2011年度、自治体などを対象に防災拠点施設への再生可能エネルギーを用いた発蓄電設備の導入を目的に補助金制度を創設した。同年度から14年度にかけて、累計で43の都道府県と10の政令指定都市に補助金を交付したほか、15年度には1財団法人へ同様の補助金を交付。同財団法人を通じて全国の市町村への補助を実施した。一連の補助金で整備された事業数は5200件以上にのぼる。

省は、補助金の対象設備について、災害などによる停電時を想定した自家発電設備と位置づけ、太陽光発電設備を設置する際、夜間や悪天候時の補助として蓄電設備の併設が必要とした。

しかし、会計検査院が全国726事業を調査したところ、36事業の蓄電設備に不備を確認。目的に即した機能を果たせない状態にあると環境省に指摘した。

問題は、複数ある発電系統のいくつかが蓄電池を欠いているというものだ。

たとえば、指摘を受けた三重県紀宝町立の生涯学習センターでは、15年度に4系統計40kWの太陽光パネルを設置。その内の3系統にそれぞれ蓄電容量15kWhの蓄電池を併設したが、残る1系統には蓄電池を取り付けていなかった。

同町への補助金交付に携わった環境イノベーション情報機構によれば、この蓄電量は想定される夜間電力需要を満たすには問題ないという。しかし、残る1系統が機能を大きく限定された状態で稼働するのは、災害用電源の整備という補助金の趣旨に即さないというのが会計検査院の見解だ。

同院はまた、PCS(パワーコンディショナ)が自立運転機能を持たない場合、停電時にPCSの稼働が止まり、その系統からの出力が失われると懸念する。

そこで同院は、全系統に蓄電設備を設けるなどの改修が必要だとして環境省に是正措置を要求した。

環境省環境計画課は、「全系統に蓄電設備が必要なことはきちんと伝わっていたという認識だ。事実、多くの事例では問題なく蓄電設備が備わっている」とし、不備があった要因について、「行政機関の人員削減により、(自治体には)設計の内容を詳細に確認できる人材が不足しているのではないか」とも述べる。実際、「工学系の知識を持つ職員は県庁にしかおらず、各市町村まで手が回らない場合もある」と話す自治体職員もいる。

ただ、事前に環境省から受けた実施要綱の内容が曖昧だったとの声もある。ある自治体の担当者は「蓄電設備の必要性は理解していたが、今回指摘されたような細かい留意点までは読み取れなかった」と語る。

同省は今後の対応として、指摘に挙がった各自治体に改修を要請し、職員を派遣して確認を行うとしている。また、今回の検査対象となっていないものも含め、補助金で整備された全ての事業について調査を行う。

環境計画課は、「正しく伝わらなかった部分については周知徹底を図る。せっかくの設備なので、きちんと改修して活用してもらえればよい」と話す。

この記事を読むにはWEB会員専用アカウントでのログインが必要です

ログイン

eye sight を読む

一覧を見る