ファースト・ソーラー、メガソーラー開発で紛糾
地域住民が猛反対
CdTe太陽光パネルメーカー、米ファースト・ソーラーのメガソーラー開発が暗礁に乗り上げている。京都府と三重県をまたぐ山林を切り開く大規模な計画に地元住民が反発。両者の溝は埋まらないままだ。
ファースト・ソーラーの計画は、京都府南山城村と三重県伊賀市をまたぐ山林およそ82.3haを伐採し、約30万枚のパネルを敷くというもの。出力37.5MW、総事業費150億円を超える巨大プロジェクトだ。
事業主は、同社の日本法人ファースト・ソーラー・ジャパンが100%出資する合同会社P6(FSジャパンプロジェクト6)だ。P6は2015年12月、京都府から林地開発の許可を得るため事業計画書を提出。すでに地権者とは20年間の土地賃貸契約を締結し、林地開発の許可を待っている。
ただ府の条例により林地開発には、地域団体との協定が必要だ。そこで協定が必要な4区の自治会のうち3区と締結したが、開発地付近の月ヶ瀬ニュータウンとはまだ協定を結べていない。住民がメガソーラー建設に断固反対しているのだ。
反対の理由は主に3つある。1つ目はP6への不信感だ。計画は最初EEJというディベロッパと始めたが、EEJに反社会的勢力との関係疑惑が浮上。P6はEEJとの契約を解除したが、住民は「反社会的勢力が携わった計画だから白紙にするべき」と批判する。
だがP6は計画を撤回しないだろう。調査や設計に要した時間と費用が水泡に帰すばかりか、36円の売電権を失ってしまう。電力会社と売電契約を締結済みだから改正FITによる認定取消しの心配もない。是が非でも成功させたいはずだ。
2つ目は発電所の建設で生じるリスクだ。大規模に森林を伐採するため、住民は土砂災害や希少生物への影響を恐れている。実際村では1953年に死者330人を超す土砂災害が発生した。ほかにも、景観の破壊やCdTeパネルに含まれるカドミウムの流出による健康被害を懸念している。
3つ目は、住民に利益還元がないことだろう。P6は道路幅の拡充、新規雇用の創出を謳うが、道路は一部の住民しか利用せず、雇用も一時的なもので、肝心の電力は中部電力に売電されるのだ。「村民に何の得もないものをつくるために、なぜ村の自然が破壊されなければならないのか」。住民は憤る。元村長の橋本洋一氏は、「村の自然を守って子供や孫に受け継いでいきたい。一部の会社や地権者だけの金儲けに、村を利用してほしくない」と訴える。
P6は住民説明会を繰り返し、懸命に理解を求めている。最近では1月28日に開催。その際質疑応答の時間が足りなかったという要望に応え、2月11日に再度説明会の時間を設けた。「真摯に質問に応じる姿勢には好感が持てる」と評価する声もある。
ファースト・ソーラーは、「山林は現状適切に管理されていないので、開発によって災害の危険性は低下する」と説き、「建設に際し除草剤は一切使用せず、20年後にはパネルを撤去し事業地に植樹する」と表明。さらに「歩道に沿って桜を植えたり、ビオトープを設けたりして動植物の保存に努める」とし、「CdTeはカドミウムと比べ安定・安全だ」と主張する。
同社は17年内の着工、20年の稼働を目指している。
恐らく計画が頓挫する可能性は低い。法律や条例に違反しているわけではないからだ。とはいえ、住民との交渉が成立しないまま、強引に建設に踏み切るわけにもいかないだろう。
ならば、住民への利益還元を考えてはどうか。売電先を新電力に替え、その新電力が住民に安く電気を販売するスキームもある。蓄電池を併設して災害時に無償で電力を提供したり、売電収益の一部を寄付したり、地元小学校の環境学習として提供したり、方法は多々ある。