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ソーラーフロンティア、パネル生産集約

起死回生の一手となるか

ソーラーフロンティアが、年内にも薄膜CIS型太陽光パネルの生産を国富工場に集約する。宮崎工場の生産を停止し、昨年本格稼動した東北工場の生産も休止、9月下旬には早期希望退職者を募った。いったい何があったのか。(本誌・川副暁優)

「宮崎、国富、東北の3工場の生産を国富に集約することを最終決定したのは、7月末の取締役会だった」。

平野敦彦社長はそう経緯を話したが、昨年から自社製品の競争力に不安を抱き、抜本的な解決策を思案していたようだ。

仮にも、昨年6月に商業生産を開始した東北工場が1年早く稼働し、中国メーカーの価格攻勢にも勝る強力な武器を手にしていたならば、米国遠征を成功裏に進めることができたのかもしれない。

だが、現実は非情なり。米国では昨年から結晶系パネルの価格競争が熾烈さを増し、市況が急落。米国のパネルメーカーが倒産に追いやられ、ITC(国際貿易委員会)が慌てて救済策を検討し始めたほどである。

かねてより米国に進出し、米国事情に詳しかったソーラーフロンティアとて、この激変は読めなかったのだろう。生産品の4割近くを米国に輸出していただけに打撃は大きく、急きょ国内販売に舵を切って、2016年第4四半期には国富工場の生産能力を7割に抑えたものの、痛手を被った。

16年12月期の決算は、米国展開の損失が響き、売上高は604億3600万円と前期比22%の減収、227億円の最終赤字を計上した。今期は国内販売に傾注し、赤字幅は減少しているが、通期の黒字化は厳しい。

3期連続の赤字が確実のなかで、生産の集約と早期希望退職者の募集だ。取引先の販売・施工会社からは不安の声が上がり始めているが、平野社長はこう語る。

「薄膜CIS型パネルで独自の価値提供を打ち出していくという方針は変わらない。ただ、そこに至るまでのコモディティ化、足元の激烈な価格競争に打ち勝っていくための戦略を練り直し、導き出した答えが、工場の集約である」。

つまり、工場の集約とは、収益力向上を図るために現行の量産品のコスト構造を改め、競争力を高める起死回生の打開策なのだろう。

具体的には、東北工場の生産を9月末で一時休止し、宮崎工場の生産を12月末に停止させて国富工場に生産を一本化する。東北工場では3×4低電圧タイプを、宮崎工場では2×4タイプを生産してきたが、これらを国富工場で引き継いで生産するというわけだ。

確かに、国富工場の年産能力は現在700MWであるのに対し、東北工場は150MW。宮崎工場に至っては80MWと小規模で、設備も老朽化している。国富工場で生産すれば、スケールメリットを活かし、製造原価は抑えられそうだ。

だが、東北工場には最新鋭の設備を導入し、国富製品よりも高出力な製品を生産する計画があった。果たして東北産パネルを国富工場で生産できるのか。

平野社長は、「東北産パネルを国富で生産できることを証明した。むしろ東北で得た経験を国富に持ち込むことによって、国富でさらに上をいく製品を量産できることを実証した。今後は工場の多機能化を図っていく」という。

そもそも東北工場は、将来の海外生産展開を目指すモデル工場の役割を担う予定だった。それゆえ、出力180Wを超える高出力パネルの製品化を進めていたのだが、米国展開の苦戦により方向を修正。これまで特定の大手顧客向けに出力175Wの3×4低電圧タイプを限定生産していた。

しかし、東北工場で取り組んだ出力向上技術は無駄ではなかったようだ。同社によると、東北工場での出力向上技術を国富工場に持ち込んだことによって、国富産の3×4パネルはすでに180Wを突破、来年からは190W品の販売も視野に入れているという。

そして東北工場は19年を目途に発売する新製品の開発拠点として活用するようだ。平野社長は、「新製品は、軽く、薄く、割れないという特性のあるパネルだ。差別化製品で新たな価値創造を目指す」と意気込む。

ともあれ、工場を集約すると、生産部門の人員が余る。同社は9月27日、初めて早期希望退職者を募った。平野社長は、「国内営業を拡充するため、社員には営業部門への配置転換をお願いしている。ただ家庭の事情で移動できない方もいる。その方々のためにセカンドキャリアを支援する制度を設けた」と説明。東北工場からは社員20人ほどが国富工場に移り、宮崎工場の社員50人は国富工場や営業職に回る予定だ。個別事情で配置転換に応じられない社員50人ほどが希望退職制度を活用する模様である。

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