中国パネル値上げに困惑広がる
夏頃から中国製パネルが値上がりしており、EPC(設計・調達・建設)企業らが対応に苦心している。安価ゆえ中国製を採用した企業も多いだけに影響は大きい。(本誌・中馬成美)
「13MWの案件で正式発注しようとした前日に値上げされた。他メーカーに変更したが、シリコンが逼迫して製造できないといわれ、納期が3ヵ月遅れた」。あるEPC企業の幹部は困惑の色を隠せない。
Wあたり1円の値上げでも1MWになれば100万円だ。コスト低減に取り組むEPC企業にとっては大きな痛手になる。
系統制約問題や新規認定遅れなどの影響もあって、開発から着工までには時間がかかる。その間に新製品が発売され、パネルの出力が向上するのであれば、できるだけ発注を待ちたいというのがEPC企業の本音なのだろうが、「当初提示した見積もり額に対し、Wあたり6〜7円値上げするメーカーもある」(商社筋)。EPC企業にとっては困りものだ。
中国パネルが高騰している背景には、シリコン等の原材料の需給逼迫が影響している。中国国内の需要増に加え、米国で急激に需要が増えているからだ。
というのも、米ITC(国際貿易委員会)は米国に輸入される結晶系太陽光パネルに対して関税を課すほか、最低輸入価格を設定するなどの保護貿易措置を検討しており、来年1月にも実施される可能性がある。そこで、米国のEPC企業らが、我先にとばかりに安価な中国パネルを先買いしているのだ。メーカーからすると、大量に高く売れる米市場を優先するのは当然だ。
特に単結晶パネルの値上げ傾向が強まっているらしい。ある中国メーカーは「多結晶の納期は約2ヵ月、単結晶は3ヵ月以上かかる。今年は単結晶の原材料不足で生産が追いついていない」と明かす。
一方、外資系日本法人の元幹部が「シリコンが足りないというのは表向きの言い訳にすぎない。日本法人の責任者が日本向けに数10MWの枠を確保するよう本社と交渉できれば、ある程度の値段は維持できるはず」と語れば、ある中国メーカーの日本法人社長は「どこも値上げはW3〜4円程度。それ以上値上げすると、顧客が離れる。信頼関係を重んじる日本市場を理解していない証拠だ」と断言する。
日本市場においてシビアな価格交渉をどう展開するのか。中国メーカーの動向に注目が集まる。