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パナソニック、滋賀工場3月閉鎖へ

パネルの国内生産から撤退

パナソニックは9月7日、太陽光パネルを製造する滋賀工場を来年3月に閉鎖すると発表した。生産拠点を海外に集約し、国内生産から撤退する。価格競争力で勝る海外勢に対抗する狙いだ。

来年3月に閉鎖が決まった滋賀工場

9月7日、パナソニックは『ソーラー事業競争力強化に向けた構造改革について』と題するリリースを公表。その中でパネルを製造していた滋賀工場を来年3月に閉鎖し、住宅用・産業用パネルは主にマレーシア工場で製造していく方針を明らかにした。大阪府の二色の浜工場ではトヨタ自動車向けの車載用パネルのみ生産を続けるが、事実上パネルの国内生産から退く。

同時に、米・オレゴン州にあるインゴット工場の閉鎖も決めた。来年度以降、インゴットはすべて外部からの調達に切り替える。

パネルの生産体制の見直しを図る一方、今年度中に太陽光パネルメーカーに向け、太陽電池セル単体の販売を始める。パナソニックは、「パネルはコモディティ化が進み、当社の強みを生かせる余地が小さくなっている。また、技術進展に伴い、パートナーシップを組むことで、他社で組み立てを行っても品質を担保できる目途が立ってきた」と理由を語る。滋賀工場閉鎖後も、島根のセル工場はフル生産を続けるようだ。

同社のセルは、アモルファスシリコンと単結晶シリコンで構成する独自のヘテロ接合型で、一般的な単結晶シリコン型よりも発電効率が高い。

パナソニックはこの独自セルを搭載した高効率パネルを武器に、FIT開始以降一貫して住宅から低圧市場を攻略する戦略を描いてきた。この層のユーザーは、価格よりも品質を重視すると踏んでいたのだ。

2015年5月には、滋賀と島根の2工場に計95億円投資すると発表した。年産能力を150MW分増強し、1000MW超の体制を敷く構想を打ち出したが、わずか2年後に下した滋賀工場閉鎖の決断を見れば、この大型投資は失敗に終わったといえよう。

パナソニックは、「増産投資を行ったが、大きな環境変化を読み切れなかったことについて反省している。制度変更やFIT価格の低下により、国内需要が想定以上に縮小したため、滋賀工場でのパネル生産を終息することを決めた」という。

また、昨年からパネルの市場価格が急激に下がり、海外勢の製品と価格差が開きすぎた点も、滋賀工場閉鎖の大きな要因だろう。パナソニックのパネルは高効率である反面、海外メーカーの単結晶パネルに比べれば高額だ。買取り単価がFIT開始当初の半分、すなわち21円/kWhにまで下落したいま、同社は価格競争力に勝る海外勢にシェアを奪われ、増産を決定した時点で想定していたほどの受注を獲得できなかったようだ。生産能力の増強を発表してわずか9ヵ月後の16年2月には、セルとパネルを製造する大阪府の二色の浜工場の稼働停止を発表している。

そして1年半後に決定した今回の滋賀工場閉鎖。国内生産を続けては、これ以上のコスト低減は不可能だと見切りをつけたのだろうか。マレーシア工場に生産拠点を集約することで、価格競争力を高める狙いだ。

海外生産に舵を切る国内パネルメーカーはパナソニックだけではない。シャープが自社工場で生産するのは一部の住宅用パネルのみで、その他は国内外の企業に製造を委託している。京セラも今年3月に三重県の太陽光パネル工場を閉鎖した。国内生産から海外生産へ転換を図る日本メーカーは、日本でシェアを拡大し続ける海外勢に対抗できるのだろうか。

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