現地ルポ
九州北部豪雨でメガソーラーが一部損壊
一方、東峰村で太陽光発電設備の販売を行う岩下芳行さん(61)は奇跡的な話をしてくれた。岩下さんは、27.8kWの太陽光発電所を所有し、4kWのPCS(パワーコンディショナ)を建屋内に7台設置していたのだが、近くの用水路が氾濫し、その建屋に土砂が流れ込んだという。3台のPCSは浸水してしまったが、「ブレーカーを落として5日後、安全確認してから、スイッチ入れたら、良うなっちょった」と岩下さんは意気揚々と話す。パネルは40㎝ほどの高さがあったため、水に浸からず、無傷の状態だった。
同じく東峰村の川沿いに住む伊藤和幸さん(68)は母屋に12kW、車庫に14kWの太陽光発電設備を設置していたが、車庫のPCSが水に浸かり、14kW分が使用できなくなってしまった。
「全部やられた」。肩を落とす伊藤さん。聞くと農業を営み、胡椒やイチジクを栽培していたが、その畑も被害に遭い、農機具まで使えなくなってしまったという。それでも、
「まさかよね。いっそ農業やめた方がよか気もすっばってん。そんままやと農地は荒れるしね。軽トラックもダメになったけど、何とかせんばいかんね」。
そう言いながら、伊藤さんは、はにかんだような笑顔を見せた。
被害は深刻だが、出会った人は気丈で前を向いていた。被災した現場では人間の強さが垣間見えた。