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新規認定遅れが問題に混乱続く住宅用太陽光市場

FIT法の改正で様々なルールが変わった。移行に伴い、多少の混乱も予想されていたが、想定外の事態も巻き起こっている。新規認定が全く下りないのだ。特に住宅用太陽光市場で戸惑いの声が上がる。国による早急な対応が求められる。(本誌・楓崇志)

「施工が終わって代金をもらったが、認定が下りないので売電を開始できない。お客様に明確な説明ができず、非常に困っている」。

ある販売店はそう訴える。改正FIT法で売電開始までのフローが変わり、新規案件の売電開始は電力会社との接続契約の締結後に経済産業省の認定を取得してからとなった。

接続契約締結までに1ヵ月程度かかると想定されていたものの、「4月に入ってすぐ提出したが、平均1週間で返ってきた。意外と早くて驚いた」(関係筋)。それを受けて認定を申請したものの、いつまで経っても下りない。標準処理期間は1〜2ヵ月であるはずだが、「6月に入っても回答がない」(同)のだ。

経済産業省資源エネルギー庁新エネルギー課は、「改正によって必要書類や申請項目が増えたことで、不備なども多く、1件の処理に時間を要している。それにみなし認定の移行手続きも重なっている」ため、認定手続きに遅れが生じていると説明。

また、新規認定手続きは『JPEA代行申請センター』、移行手続きは『再生可能エネルギー新制度移行手続代行センター』と窓口が異なるため、誤って手続きしているケースも発生しているようだ。

業界内ではシステムの不具合が原因と疑う声も聞こえるが、いずれにせよ6月上旬時点でも状況は改善していない。ここまで新規認定が滞ると、中小零細の施工・販売店にとっては死活問題だ。「このまま続くと、施工・販売店の資金繰りに影響が出る恐れがある。早く解決しなければまずい」とメーカー幹部は危機感を隠さない。

仮に施工したとしても、工事請負契約を交わしていれば、施工完了後にユーザーへ費用請求しても問題はない。だが、売電収入がなくてもソーラーローンの返済が始まる。認定が下りてから施工していれば、ユーザーからのクレームの可能性は減るだろうが、キャッシュフローは止まる。

「認定が下りるのをずっと待っていたが、これ以上受注残を積み重ねると、のちのち工事を捌けなくなる。6月に入り、先に工事を始めた施工店もいる。発注もギリギリまで待っていたが、このままだと資金だけでなく、日程も回せなくなってしまうからだ」(関係筋)。

新築住宅市場はさらに深刻だ。基本的に太陽光発電を搭載したうえで引き渡すため、施工を遅らせにくい。発注元の工務店などの説得に頭を抱える施工店の声も聞こえてくる。

しかも昨年度は1月20日に新規認定を打ち切った時点で次年度の買取り価格が判明していた。全国工事店ネットワークを運営するソーラーパートナーズの中村雄介専務取締役は、「空白期間がなく、そのまま営業活動を続けて契約を取れた。ただ、2月頭に契約した人はもうすぐ4ヵ月経つのにまだ売電していない。施工・販売店の怠慢が疑われるとの相談もあり、慌ててホームページに関連情報を掲載した」という。

新エネ課は「今週末(注・6月3週目)より順次認定を出していく見込み。目途も含めた認定状況に関するお知らせもホームページ上で行う」とし、6月19日に新規認定申請などの審査状況を公表した。だが、ある販売店は「先が見えないとユーザーに説明できないし、公的な発表がなければ信用も得にくい。とにかく遅い」と怒り心頭だ。

また、改正に伴い、12年7月以降に設置した住宅用太陽光ユーザーは9月30日までに移行手続きをしなければならない。その数、100万件を超える。施工・販売最大手の日本エコシステムが既存顧客へフリーペーパーを配布し、移行手続き支援をお知らせするなど個別の動きは始まっているが、業界全体はもとより地域の施工・販売店の協力は欠かせない。

資源エネルギー庁は新規認定申請について、「暫定的な審査フローの見直しや体制強化を図り、審査を迅速化する」としており、彼らの力を借りるためにも一刻も早い状況の改善が望まれる。

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