埼玉の大型倉庫で火災
屋上の太陽光パネルも燃焼
事務用品販売のアスクル(東京都江東区、岩田彰一郎社長)が埼玉県に保有する大型倉庫で、2月16日、大規模な火災が発生した。幸いにも死者は出なかったが、鎮火に2週間弱を要した。屋根上の太陽光パネルが消火に支障をきたしたという報道もあるが、果たしてそうなのか。
火災の発生現場は埼玉県入間郡三芳町にある鉄筋コンクリート造り地上3階建ての『アスクルロジパーク首都圏』。延床面積は約7万2126㎡、およそ7万種もの商品を保管・発送するアスクルの大型物流倉庫だ。
火災発生時刻は2月16日午前9時頃で、1階北側の廃段ボール置き場から出火したと見られる。火は2階、3階へと燃え移り、最終的には延床面積の60%超にあたる4万5000㎡が焼損した。
三芳町が鎮圧(火が見えなくなる状態)を公表したのは火災発生から6日後の22日午前9時30分。そして、そこからさらに6日後の28日午後5時になってようやく消防隊が撤収し、埼玉県危機管理防災部が鎮火を発表した。なぜ鎮火までにこれほどの時間を要したのか。
一部の報道に、太陽光パネルを搭載していたために消火が遅れたという趣旨のものがある。太陽光パネルは日が出ていれば発電を続け、夜間であっても、火災の光で発電する可能性があるため、消防隊員が放水や鎮圧の際に感電するリスクがつきまとうのだ。
また火災鎮圧後は発電を止めるべく、感電しないよう気を払いながらパネルを裏返したり、遮光シートをかぶせたりしなければならならず、パネルの滑落にも注意する必要がある。こうした危険因子をすべて取り除かなければ、安全の確保はできない。
ただし3月14日に消防庁や国土交通省らが開催した『埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた防火対策及び消防活動のあり方に関する検討会』で公表された資料によれば、消防隊は到着して1時間後の10時30分時点でパネルの電源を遮断するようにアスクル従業員へ要請し、同日14時44分には梯子放水隊へパネルへの棒状注水の禁止を通達。翌日15時45分には、集電箱と接続箱の遮断を完了している。
消火にあたった埼玉県の入間東部地区消防組合によれば「確かに太陽光パネルから感電しないよう気を配らねばならず、それにより消火に手間取ったが、噴霧注水を行って消火し、それほど深刻な問題ではなかった」と話す。
一方、先の検討会ではいくつかの防火シャッターが正常に作動しなかった点が明らかになっている。無論、それが延焼の原因のすべてではないだろうが。
アスクルは3月20日現在、未だ火災の原因と被害総額を明らかにしていない。
では、太陽光発電設備のオーナーが火災に対しリスクを軽減する方法はないか。
大手防災メーカーによれば、「太陽光パネルの消火専用の防災設備は現状恐らく存在しない」という。
だがパネル1枚ごとに直流の発電電力を交流に変えるマイクロインバータや、オプティマイザと呼ばれる、パネル数枚単位で発電電力量の最大化を図る装置があれば、火災時のリスクは低減できる。なぜなら、マイクロインバータやオプティマイザの電源を落とせば、パネル同士の接続が途切れ、1〜数枚のパネルが独立して発電を続けることになる。その程度の電圧であれば放水して電気が流れたところで命を落とすほどの感電に陥る心配は低い。
例えばアメリカのように、建造物の屋根上に太陽光パネルを設置する場合、火災発生時にマイクロインバータやオプティマイザを介して、パネルとPCS(パワーコンディショナ)間の電圧を一定以下に制御するよう設備の所有者に要求する国もある。
リスク低減という意味では有効かもしれない。