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屋根上太陽光に異常な錆び続発

金具メーカー対策に腐心

金属屋根に設置された太陽光発電設備がわずか数年で錆びるという異常な現象が続発している。沖縄県では、2年前に設置した架台や取付金具が腐食し、メーカーが交換対応に迫られた。問題が頻発する可能性もある。

ある内陸部の工場では、太陽光パネルの縁から雨水が落滴したことにより、設置から僅か1年で金属屋根に腐食が発生した。

「ここ2年ぐらいで問題が顕在化した。他のメーカーでも対策が急務になっているはず」。

こう語るのは、ある中堅金具メーカーの社員だ。彼の言う問題とは、屋根上に設置した架台や取付金具に発生する金属腐食だ。むろん、大半の架台や取付金具は、高耐食性の素材を採用したり、めっき処理を施したりしている。それがなぜ数年で腐食してしまうのか。

前出の社員は、「金具単体はメーカーが耐食性をチェックしているが、取付金具と金属屋根との相性によって、想定外の腐食が起こる」と説明する。

想定される原因を腐食防食学会に尋ねたところ、取付金具と金属屋根という異なる金属が接触した部分に、海塩や、空気中のSOx(硫黄酸化物)やNOx(窒素酸化物)を含んだ水が付着すると、陰イオンが発生するという。それが金具表面のプラス電荷を帯びた亜鉛と反応すると腐食が起こる。

また、風雨をしのげるパネルの下は、空気中の塩分が溜まりやすい。そこに、冬場の寒い雨などによって結露ができると、塩分濃度の高い水がつくられ、腐食の進行を早めるケースもあるそうだ。金具の腐食を放置すれば、錆びが屋根に付着し、もらい錆びが発生しかねない。

特に台風の多い塩害地域で金属腐食が起こりやすいようだ。沖縄県のある大型商業施設では、2年前に設置したばかりの取付金具数点に金属腐食が発生。施主からクレームを受け、メーカーは交換対応に迫られた。こうした問題が続発しており、金具メーカーは対応製品の開発を急いでいる。

一方、別の架台メーカー部長は、金属腐食は取付金具に起因するものだけではないと指摘し、「太陽光架台を伝って雨水が金属屋根に落滴することで、屋根自体に想定外の腐食が発生する場合がある」と語る。

同部長は、太陽光パネルの縁がある箇所に沿って、等間隔に錆びた金属屋根の写真を見せながら、「落滴による腐食は折板屋根の素材や状態による。塩害とは無縁の地域でも起こる」とし、「写真は、内陸部の工場に太陽光発電システムを設置して、1年足らずで腐食が発生した事例だ」という。同社は落滴する箇所に専用のシールを貼るなどの対策を提案していくようだ。

とはいえ、既設発電所の場合、事前の予算に取付金具の交換費用や屋根の修繕費用を組み込む発電事業者やEPC(設計・調達・建設)業者は少ないはず。20年は耐久すると考えられていた製品が早々に腐食してしまっては困りものだ。

金属腐食に詳しいあるO&M社長は、「どれだけ耐食性に優れる素材であっても、腐食しない材料はない。どの程度から修繕の必要な腐食とするか、判断は難しい」としたうえで、「腐食は環境下の影響が大きく、傷がつくなどの外的要因もある。相談を受けた時は、最初からコストをかけて対策するよりも、データを取りながら経過観察していくことを勧めている」と話す。

金属屋根が腐食すれば、雨漏りを引き起こし、ひいては工場の機械類の破損を招くこともある。メーカーは対策を進めているが、発電事業者やEPC業者は、設備の設計やメーカーの選定に一層の注意を払い、適切な点検を行うべきだ。

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