京セラ、電力小売りに参入
太陽光由来の電力に特化
京セラが太陽光発電由来の電力の小売りを始める。脱炭素経営に乗り出す企業へ、自社の太陽光発電設備が生み出す再エネ電力を届ける。製造から電力調達・販売まで手掛け、新たな形で太陽光関連事業を展開していく。(本誌・楓崇志)
京セラは2023年9月28日、再生可能エネルギーを用いた電力小売り事業に10月1日から参入すると発表した。すでに小売電気事業者の登録を済ませ、〝非FIT〟太陽光発電設備から再エネ電力を調達し、自社で使用しつつ、外部にも販売する。発電量予測や需要予測、計画値策定といった需給管理業務は、同社のエネルギーソリューション事業部で行う。
電源の調達先は主に4つを想定。まず、大東建託との共同事業で集合住宅に設置した太陽光発電設備だ。京セラは9月1日から余剰電力を買取り、自社工場で使用しているという。
次に、非FIT太陽光発電所だ。京セラはこれまで660MWのFIT太陽光発電所を開発してきた経験を活かし、ため池や遊休地などで発電所を開発し、所有・運営まで手掛けていく。
さらに、法人向けオンサイトPPA(電力売買契約)の太陽光発電設備と、住宅向け定額リース事業で設置した太陽光発電設備である。いずれも京セラは余剰電力を買取り、調達先とする考えだ。
特徴的なのは、すべて京セラ製の太陽光発電設備から再エネ電力を調達する点だ。京セラの池田一郎エネルギーソリューション事業部長は、「クリーンな再エネを求める声が強まるなかで、メーカーである当社だからこそ提供できるサービスだ」と自信を見せる。
実際、同社は1975年に太陽電池の研究開発を始めてから製品の品質や長期信頼性の向上に力を入れてきた。いまや設置場所や設置形態、製品設計をもとに太陽光パネルの寿命を予測する技術まで開発済みで、現在はパネル製造の一部を中国企業に委託しているものの、同社が技術を供与し、品質を管理することで長期信頼性の向上に努めている。
再エネ電力を安定的に供給するうえで、発電設備の長期信頼性や関連技術は優位に働くが、さらに京セラは施工や管理・保守、事業運営の体制や知見のほか、信用力もある。そこで今回、電力小売りまで一貫したサービスを始めたのである。
ただし、同社は、不足分を含めた電力を一括供給するわけではなく、太陽光発電のみの部分供給にとどめる方針だ。池田事業部長は、「電力会社と連携し、協業していきたい」としたうえで、再エネの調達量は、「3年で2億kWh程度は入手できる見込みだ」という。
日本の太陽光関連機器メーカーは、競争力のある海外勢に押され、事業の軌道修正や業態転換を進めた。今回の京セラの電力小売り事業も、その流れに沿うものと言えよう。京セラはこれまで培った製造技術を活かした〝コト売り〟で成長軌道に乗れるのか。重要な分岐点になりそうだ。