「出力抑制低減へ、優先給電ルールの見直しを」
京都大学大学院 経済学研究科 諸富徹 教授
再エネの出力抑制に向け、対策はあるのか。再エネに詳しい京都大学大学院の諸富徹教授が見解を語った。
再生可能エネルギー電源の出力抑制量が急増した現状を危惧している。2030年までに全電源に占める再エネ比率を36~38%まで高める目標があるなかで、再エネ比率22%程度で出力抑制の問題が顕在化しているようでは、先が思いやられる。
23年上期は出力抑制の頻度が多く、九州電力管内では発電事業者の受忍限度を超えた。出力抑制問題を早期に解消しなければ、再エネ事業者の事業採算が悪化し、金融機関からの資金調達まで厳しくなるだろう。今後出力抑制が常態化するならば、経済損失を補償する仕組みを導入するべきだ。このままでは、再エネ業界が衰退しかねない。
原子力発電所が再稼働した関西電力管内も、今後は出力抑制が増えそうだ。原発の再稼働による電力供給量の増加によって、再エネの出力抑制量が拡大することを非常に懸念している。
ともあれ、経済産業省が23年10月に公表した『出力制御対策パッケージ』骨子案には、踏み込んだ対策が描かれており、評価している。これで問題が解決することを期待したいが、現行のルールでは限界があるように思う。
やはり、優先給電ルールの見直しに踏み込むべきだ。火力発電の最低出力を30%に引き下げることになっているが、再エネを優先するのであれば、火力発電の最低出力をさらに下げられないか、検討するべきだ。少なくとも、出力抑制の頻度が多い春と秋には、石炭火力を解列させるか、休止させるべきだと思う。
さらに、原発の点検を春や秋に実施すれば、再エネの出力抑制は低減するだろう。原発を停止させずに運用を工夫することで、再エネ電力の受け入れ量を増やすのである。
ドイツでは変動電源の再エネに対して原発を追随運転させることで再エネの出力抑制を回避していた。日本でも技術的に可能な範囲で原発の追随運転ができれば、再エネの導入に繋がる。
一方、再エネの発電事業者は今後、電力需要の動向を見ながら発電事業を手掛けるべきだろう。脱炭素社会の実現に向け、地域に根差した再エネをさらに増やしていかなければならない。