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シャープ、鴻海傘下で再建へ 太陽光は継続意向も

電子機器受託製造大手の台・鴻海精密工業のもとで再建を目指すシャープ。ただ鴻海は太陽光にそれほど関心を寄せていない。シャープはどのように太陽光事業で巻き返しを図るのか。

4月2日、鴻海とシャープは調印式に臨み、鴻海がシャープに3888億円出資してシャープの発行済株式総数の3分の2以上を取得することを決めた。シャープは鴻海の傘下で経営再建を図ることになったのだ。

鴻海の郭台銘会長は2日の記者会見で、「私はシャープが大好き」とも語り、シャープ株の66%を取得したことについて、「買収ではなく投資」と強調、友好的な関係を築く構えを示した。

ただ、郭会長の関心はもっぱらシャープの省エネ液晶『イグゾー(IGZO)』や有機ELといったディスプレー関連技術に向いている。「シャープのイグゾー技術は世界一」と絶賛し、「私の頭の中には明確なロードマップがある」とまで語ったが、太陽光事業についてはほとんど触れなかった。事実、鴻海は出資金3888億円のうち、有機EL開発に2000億円投じるが、太陽光事業への投資額は80億円だ。

結局、太陽光事業に関しては、鴻海の戴正呉副総裁が、「ポリシリコンの長期契約などで評価損が生じた問題は過去の話。今後はスマートハウス事業に力を入れていき、太陽電池は商材の一つ」と語っただけだった。

それだけに、「鴻海はシャープを買収後、エネルギーソリューションカンパニー(太陽光事業部門)を切り離すかもしれない」(業界関係者)、「鴻海が欲しいのは液晶。赤字体質の太陽光は早く売却したいのでは」(国内EPC幹部)との憶測が飛び交う。

むろん、鴻海の真意は読めないが、そもそもシャープの太陽光事業は、収益が低迷し、業績不振の要因となっている。16年3月期は、期初に黒字転換を図る計画だったが、またしてもポリシリコンの評価損が発生し、70億円の営業赤字に陥る状態だ。

いずれにせよ、赤字が続けば、長くは続かない。早期に黒字化を果たすほかに道はないのだ。

シャープエネルギーソリューションカンパニーの佐々岡浩社長は、住宅用太陽光システムのユーザーに対するメーカー保証について、「シャープとして責任を持って保証させていただく」とし、「シャープは太陽光事業をやめるわけにはいかない。商品開発と競争力の強化に力を注ぎ、早期黒字化を目指す」と力を込めた。

日本のPV業界を牽引してきた太陽電池の雄。かつての勢いを取り戻してほしいものだ。

左から、鴻海の戴正呉副総裁、郭台銘会長、シャープの高橋興三社長

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