太陽光はやめない 鴻海幹部の理解を得た
シャープ執行役員エネルギーソリューションカンパニー社長 佐々岡浩氏
──16年3月期の太陽光事業の予想を70億円の営業赤字に修正したが、理由は?
佐々岡氏●太陽光市場の縮小とポリシリコンの評価替えで期初の予想を下回った。毎日ポリシリコンの価格は下落しており、決算のたびに評価替えするが、1年後にはさらに下落している。
ポリシリコンの長期契約はいくつかあるが、2020年には終了する。
──20年を過ぎれば、太陽光事業は利益体質になる?
佐々岡氏●コスト的には合ってくる。ただ、太陽光関連事業でやらなければならないのは、グリッドパリティの水準までコスト競争力をつけること。そしてO&Mなどに取り組むこと。また、消費者の方々に太陽光は電力として安定しているということを理解してもらう必要がある。
──モジュールの販売は苦戦しているようだが?
佐々岡氏●正直、風評被害をかなり受けており、苦戦している。ただし、販売店さんからご支援していただいている。4月から太陽光事業をしっかりと進めていくと発表させていただいたので、次は消費者の方に安心していただくために、連続でZEH(ゼロエネルギー住宅)を提案する新聞広告を全国紙、地方紙で展開しようと考えている。
──貴社の太陽光システムを購入した76万件のユーザーに対する保証は続ける?
佐々岡氏●当然だ。シャープとして保証をさせていただいている。どのような結果になろうとも、責任を持ってやらせていただく。シャープは、太陽光事業をやめるわけにはいかない。そのことは鴻海の経営幹部にもご理解いただいた。
事実、鴻海は太陽光のために80億円投資してくれた。鴻海から「鴻海の経営資源を使ってください」と、温かい言葉もいただいた。まず商品開発と競争力の強化に力を注ぎ、鴻海のリソースを使わせていただきながら、早期黒字化を目指す。
──太陽光事業の黒字化に向け、課題は?
佐々岡氏●まず風評被害だ。消費者の方にも販売店の方にもご迷惑をおかけし、結果として当社の売上が落ちている。シャープは国内では太陽電池の老舗メーカーだ。国内での復活が第一歩にある。
海外では、かつて欧米でモジュールを販売していたが、今後はエネルギーソリューションだ。米国でピークカットのソリューションビジネスが始まっているが、主役はモジュールではなく、蓄電池。当社がエネルギーソリューションと名称を変えたのは、この新たな分野へ展開していくためだ。
──鴻海から投資してもらった80億円はどう使う?
佐々岡氏●我々は上流を一生懸命やってきたので、下流ビジネスのストリームをつくるために使いたい。下流とは、O&M(管理・保守)やZEH、HEMS(家庭内エネルギー管理システム)への取り組みのこと。広範囲にわたってお客様のニーズに応え、事業のバリューチェーンを広げて、それを我々の収益源に育てていく。
──太陽電池の技術開発はどう進める?
佐々岡氏●ブラックソーラーの高出力化に力を入れる。とくにセルの技術を育てていく。日本の限られた屋根のスペースでたくさん発電する高出力モジュールのニーズは高い。今夏に高出力48直モデルを発表する。
──ただ住宅用市場は縮小している。どう展開する?
佐々岡氏●ZEHを政府が推進しているなかで、これまでシャープは創電と省エネを組み合わせてきたが、蓄電も加えることで、より効率的なホームエネルギーマネジメントを提案していく。さらに我々のクラウドサービスを通じて消費者の方が簡単にエネルギーマネジメントできるシステムを提供する。その次に当社の家電を活用して、より省電力化の商品を出していく。第一弾として、DCエアコンを昨年12月に発売したが、今後もシャープらしい製品を提供していく。
──鴻海が貴社の66%以上の経営権を握るのだから、今後太陽光部門が切り離される可能性も考えられるが。
佐々岡氏●いまのところエネルギーソリューションが鴻海から切り離されることはないが、ポジティブな面で可能性はある。それはエネルギーソリューション部門に限ったことではない。株主の利益を最大化するためには構造改革もあり得る。