パナソニック、太陽光パネル生産から撤退
パナソニックが太陽光パネル生産から撤退する。旧三洋電機の超高効率セル『HIT』の技術を受け継ぎ、一時は「世界最高」の称号を武器に住宅用市場で販売シェアを伸ばしたが、その歴史に幕を閉じる。(本誌・岡田浩一)
パナソニックライフソリューションズ社は2021年2月1日、21年度内に太陽光パネルの生産から撤退すると発表した。今後は太陽光パネルを外部から調達し、自社の蓄電設備などとともに提供していく方針を示した。
パナソニックは、マレーシア工場におけるウエハ、太陽電池セル、太陽光パネルの生産から撤退する。同工場を中・GSソーラーへ売却する計画もあったが、20年7月に頓挫したため、今回改めて建物や土地などの資産譲渡を検討し、現地法人を清算する。工場に勤務する700人余りの従業員には割増退職金支払いや再就職支援などを行う。
島根工場での太陽電池セル生産も停止するが、同工場でのPCS(パワーコンディショナ)や蓄電池の生産は継続する。太陽光パネルの生産撤退に伴い、二色の浜工場におけるパネルの研究開発を縮小する。
なお、時計や電卓向けなどの民生用太陽電池や「車載用の生産は継続する」(広報部)としている。
今後の太陽光関連事業について、同社は太陽光パネルを外部から調達し、自社のPCSやHEMS(家庭内エネルギー管理システム)、蓄電設備、電気自動車用充電機器などと組み合わせて提供していく考えだ。VPP(仮想発電所)などを見据え、監視や制御サービスで差別化を図っていく狙いであろう。
同社では15年頃から太陽光関連事業が低調で、最近は半導体や液晶パネル事業と並んで赤字に陥っていた。20年2月に米・テスラと運営する米・バッファロー工場での太陽光パネル生産停止を発表するなど、生産撤退の予兆があった。
太陽光パネル国内大手では、三菱電機に続いての生産撤退となったが、背景にあるのは、海外メーカーとの価格競争力の差であろう。海外大手が続々と数10GW規模まで年産能力を伸ばしているのに対し、国内勢は全社合わせても3GW程度だ。いまや海外製パネルとの価格差は産業用分野で2倍近い開きがあり、国産パネルの出番は減少している。
一方、国内メーカーの得意領域である住宅用太陽光発電設備においても、ある販売会社の社長によれば、「国内メーカーの設備は海外メーカーの設備より2割程高く、海外メーカーの設備を求める声が増えている」という。とくにパナソニックの高性能パネル『HIT』シリーズの設備は割高で、「HITの設備は他の国内メーカーの設備より1割程高い」(販売会社社長)。
つまり、住宅用においても価格差が開き、太陽光パネル生産における事業採算性の展望が描けなくなっていたものと思われる。
ただ、高性能なHIT設備の支持層は少なからず存在していたはずだ。太陽光パネルを外部から調達すれば、設備価格こそ安くできても、HITの付加価値は訴求できなくなる。監視・制御サービスでどこまで優位性を示せるのか。あるいはPCSや蓄電設備の生産もいつまで継続するのか。同社の今後の展開に関心が集まっている。