横浜の小学校で蓄電池が発火
横浜市内の小学校で蓄電設備が発火した。原因は明らかにされていないが、三元系リチウムイオン蓄電池セルが発火した可能性が高い。(本誌・土屋賢太)
2023年12月20日12時30分頃、横浜市内の『横浜市立釜利谷南小学校』の変電室で蓄電設備が発火した。職員が異臭や発煙に気づき、消防署に通報しつつ児童を近隣の中学校に避難させた。消防隊員によって15時30分頃に消火したという。
横浜市教育委員会事務局の職員によると、「蓄電池が一部燃えたが、火は筐体の外まで燃え広がらず、建物への延焼はなかった。児童や職員への人的被害もなかった」としている。
発火した蓄電池は、東京ガスが横浜市と20年に亘るPPA(電力売買契約)を交わして21年に設置したもので、エネルギーギャップが製造した出力20kW、蓄電容量26.1kWhのリチウムイオン蓄電設備だった。
東ガスは21年度から23年度にかけて、太陽光発電設備や蓄電設備を横浜市内の小・中学校56校に導入する計画を進め、29校に太陽光発電設備を設置し、うち20校に発火した蓄電設備と同じ型番の蓄電設備を併設していた。再生可能エネルギー電力を小・中学校に供給しつつ、余剰電力を市内の公共施設に託送していたが、今回の事故を受け、全ての設備を停止させたという。
消防署は24年1月16日、市の職員や、東ガスグループとエネルギーギャップの社員の立ち会いのもと、現場を検証した。
東京ガスソリューション共創部リソースアグリゲーションビジネスグループの森田哲グループマネージャーは、「蓄電池の安全性を確保でき次第、補償も含めて再発防止への対策を検討する」という。
エネルギーギャップの郭海彬社長は、「今回発火した蓄電池と同じ型番の蓄電池は、10社程の販売会社を通じて販売していたので、発火要因を究明し、安全性が確保できるまで使用しないよう通達した。仕入れ先の蓄電池セルメーカーと協議した後、無償回収や事故の発表も含めて、対応策を検討する」と語る。
エネルギーギャップによると、発火した蓄電設備はJIS(日本産業規格)適合品で、『JIS C4412−1/2』と『JIS C8715−2』に準拠していたという。ただ、海外から調達した三元系リチウムイオン蓄電池セルを使用していたようだ。
海外製三元系セルの発火事故は21年に複数発生しており、セルを採用した国内の蓄電設備メーカーが蓄電設備を無償で回収したことがあった。それだけに今回の事故も三元系セルに原因があったのかもしれない。
なお、エネルギーギャップは23年10月に蓄電池セルを三元系からリン酸鉄系に替え、自動消火装置を搭載させるなど、従来品を改良したという。