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沖縄でマーケット消滅の危機

連系限界 住宅用も接続不能に

沖縄県の太陽光発電市場が消滅の危機に直面している。沖縄電力が7月末、管内の接続申請量が接続許容量を超えたため、8月以降の申請分から住宅用太陽光を含むすべての太陽光設備の接続が難しいと発表した。住宅用太陽光の販売店が軒並み廃業に追い込まれる懸念もある。

沖縄県は送電網が本州から独立しており、系統周波数を維持するための調整力が限られる。不安定な再エネ電力を受け入れられる容量は少なく、沖電によると、住宅用も含めた太陽光の接続許容量は310MW、300kW以上の設備は57MWが目安だという。

その脆弱な送電網に、FIT(全量買取り制度)始動後、接続申請が殺到したのだ。2013年3月には10kW以上の設備認定量が単月で73MWを突破。経産省は同年4月、接続限界の可能性を報告し、12月には300kW以上の認定量が限界に近づきつつあると発表した。

ただこの時点では、300kW未満の小規模太陽光は対象外とされ、それだけに住宅用太陽光の導入余地は残されていると思われていた。

しかし14年に入ると、想定外の駆け込み需要が発生し、認定量が急増。今年3月だけで180MW、累計で538MWに達し、管内の総許容量310MWを超えてしまった。

この事態に、沖電は急遽今年4月から、住宅用も含むすべての太陽光設備の新規申し込みに対して回答を保留するという異例の対応に出た。そして7月31日、7月末までの申請分は受け入れるが、8月以降のものはすべての設備を対象に接続が難しくなると発表したのである。

沖電は、特別に接続を認める場合もあるとし、①事業者が2月から4月まで太陽光発電の稼働停止も含めた出力抑制に応じる、②事業者が蓄電池を設置して昼間の太陽光電力を全量蓄電池で充電し、18時〜25時頃に放電する、という2つの条件を提示した。

だが発電事業者にとっては、「条件を受け入れると収益性は低下する。いまのFIT価格では採算が合わない」(大手発電事業者)。

そのほかの対策として、沖電は大型蓄電池による実証実験を進めているが、成功しても接続許容量は1割程度増えるに過ぎない。

沖縄でモジュールを販売しているある中国系メーカーの担当者は、「もう沖縄でモジュールは売れない。我々は九州や関東で直販する準備を進めており、そこにシフトするしかない。沖縄の販売店のなかには、在庫を吐き出した後、事業を撤退するところもある」と窮状を訴えた。

設備認定量と年間の建設能力から推察すれば、数年先までマーケットは活況が続くとの予測もある。だが、沖電管内のように申請量が突然許容量を超える異例の事態が発生すると、その時点で住宅用も含めて新規案件はゼロとなり、忽ち市場は冷え込んでしまう。蓄電池の実証試験や送電網の増強など、早期に対策を進めるべきだろう。

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