大鉈振るった経産省
180日ルール、低圧分割禁止で悪質業者一掃も、業界からは不満続出
空枠認定取り排除の一撃となるはずだった180日失効ルール、低圧分割禁止令に対し、早くも太陽光発電業界からは「大規模発電所の開発が閉ざされる」「分譲ビジネスは終わった」との批判が続出している。波紋拡げる制度変更とは。
4月1日、設備認定を受けたにも関わらず180日経っても、土地と設備の確保していない案件について、認定を失効させる新たな認定制度が始まった。
この措置とは、32円(税抜き)の買取り価格で設備認定を受ける50kW以上の設備を対象に、土地ならば登記簿謄本や賃貸借契約書、設備なら太陽電池モジュールの契約書、または発注書、発注請書といった、土地と設備の確保について客観的な証拠書類の提出をしなければ、認定を取り消すというもの。提出期限は認定の翌日から180日とされた。
背景にあったのが、悪質業者の存在だ。毎年度、買取り価格が減額される制度のなかで、12年度の40円(税抜き)という買取り価格欲しさに、有象無象の業者が殺到。土地や設備すらなくても発電の権利となる設備認定が取得できたため、パネル価格の下落を見越した意図的な着工遅延が後を絶たず、さらに自らは発電意思すらなく、権利だけを高額で転売する空枠認定さえ起こってしまう。
こうした悪質業者の存在で設備認定と稼働率は乖離。経産省が実施した報告徴収によって、実に672件、3GWが土地と設備いずれも確保してないという実態が浮き彫りとなり、失効期日のない制度設計の甘さに批判の矛先が向けられていた。
悪質業者排除に本腰を入れた経産省が、導入したのが先の180日ルールだった。さらに認定が取り消された時点で、電力会社が連系枠を解除できるよう接続拒否事由にも認定。「公共財である系統を不当に占拠するのは社会的悪」(大手発電事業者)と悪質業者の一掃に関しては、業界でも歓迎ムードが拡がる。
ところが、救済措置に話がおよぶと受け止め方は微妙だ。
経産省では認定失効までの期間延長について、長期化する電力会社との系統連系協議および被災地を念頭に最大360日までの延長を認めた。だが、大手ディベロッパーの幹部は、「適地は減り、農振法、農地法、森林法や地方自治体の環境アセスなどの許認可が必要ない土地などほとんどない。これら許認可を180日の間で取ることは不可能だ。制度変更によって、特高はもちろん、2MWの開発すら暗礁に乗り上げる」と語気を強める。
一方の経産省は、「連系承諾書を通知されたら接続費用などプロジェクトの事業性は計算できるはず。実際、報告徴収によって、制度の主旨に合致した事業者の80%が6ヵ月以内に土地と設備の確保ができていた。逆に連系承諾まで1年以上かかったとなれば救われないが、承諾通知を受け取ったら、最大360日で失効させる」と厳格に臨む構えだ。
「大規模発電の減少は折り込み済みだ。とりあえず認定だけ取っておけ、なんて風潮を一掃する」とも語る。こうした大鉈は50kW未満でも振るわれ、低圧分割が禁止された。
分譲などの低圧分割については従来から、「規制逃れ、社会的なムダや費用負担の不適正さ」が指摘されてきた背景がある。2MW以上なら電気主任技術者の専任が規制として存在するし、500kW以上を超えると最大30日間、保証なしに出力抑制がかけられるとの規定もある。ましてや180日ルールにも抵触しない。
こうした安全規制を逃れるための低圧分割の増加。その一方で50kW未満だと、それぞれに電柱とメーターを設置しなければならず、必要のない電柱、メーターが山のようにつけられたケースが後を絶たない。
建設費は事業者負担だとしても、メンテナンスは電力会社が請負う。となれば結局、その経費は最終的に電気代に転嫁されてしまう。「買取り制度の主旨上、低圧分割はスジの悪い発想」だと切って捨てられても仕方がないかも知れない。
「我々は決まったのなら受け入れるしかない。とはいえ、エネルギー基本計画で2030年の発電電力量のうち、再エネ比率を20%以上にすると閣議決定された。だが、1年後ふたを開けて見たら認定量が激減するなんて事態が起きたらどうする。経産省も再び制度設計のあり方を変えざるをえない」。業界幹部はこう語ったが、まずは事態の行く末を見届けるしかない。