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パワーエックス、FIT太陽光 最大75円買取り開始

九電管内 FIP転+蓄電池が条件 36円以上メガソーラー対象

蓄電池メーカーで電力事業を展開するパワーエックスが、九電管内のFITメガソーラーの電力を35円上乗せする異例の買取りを始める。FIP転と蓄電設備への追加投資が条件になるが、事業者にとってメリットは大きいかもしれない。(本誌・川副暁優)

九州電力管内では、春や秋の日中の電力需要に対し、太陽光発電由来の再生可能エネルギー電力の逆潮流が多いため、電力系統に接続して太陽光発電所を運営する発電事業者は想定以上の出力抑制をかけられている。これはJEPX(日本卸電力取引所)九州エリアプライスの値動きにも現れており、昼間のスポット価格が0.01円/kWhとなる時間帯が少なくないのだ。

それだけに、九州には蓄電設備を併設して出力抑制を回避しようと考える発電事業者が多く存在するが、なかなか踏み切れないのが実情だ。蓄電設備を後付けするには、FITをFIP(フィード・イン・プレミアム制度)に切り換える〝FIP転〟が必要で、FIP転をすると、発電予測や発電計画の作成からインバランス(差分)リスクまで負わなければならないからだ。

むろん、一連の再エネ発電業務をアグリゲータに委託すれば、FIP転は可能だ。だが、蓄電設備の併設となると、難易度は一気に上がる。太陽光発電所で発電した電力を蓄電設備にため、夕方以降のJEPX価格の高い時間帯にJEPXに卸して収益増を狙う運用で蓄電設備への投資を回収しなければならないからだ。実際、蓄電設備運用の経験に長けたアグリゲータが少ないなか、蓄電設備の併設による収益試算を分かりやすく提示できるアグリゲータはほぼ皆無である。それゆえ、蓄電設備併設は未だほとんど実現していない。

しかしここに来て、蓄電設備メーカーでありながら電力小売り兼アグリゲータのパワーエックスがこのモデルを始める。同社はFITを活用して太陽光発電所を運営する九電管内の発電事業者を対象に、既存の売電単価に35円上乗せする高額単価で再エネ電力を買取ることを決めたのだ。

差し当たって同社はFIT36円案件と40円案件を対象に、それぞれ71円、75円という異例の高額単価で原則全量買取る考えだ。発電事業者はFIP転してパワーエックスの蓄電設備を併設しつつ、FIPプレミアム収入をパワーエックスに譲渡することになるが、蓄電設備の制御から発電計画の作成やインバランスリスクの負担までパワーエックスが受託する。

これは出力抑制による収益減に悩む九州の発電事業者にとっては好都合なサービスと言えるのではないか。現に大分県内で計82MW相当のメガソーラーをFITで運用する日出電機は、パワーエックスのサービスを受ける方向で検討している。

では、この異例の高額買取りをパワーエックスはどのように組み上げたのか。

同社は現行のFIPの仕組みで、JEPX価格0.01円時のプレミアムのインセンティブに着目した。つまり、JEPX価格が0.01円になった場合、その30分コマに対するプレミアムは交付されないが、プレミアム不払相当額は同一エリア内の同月の別の各30分コマに割りつけるというルールである。このルールを九州のような出力抑制が頻発しているエリアに持ち込むと、調整前プレミアムよりも調整後プレミアムが上昇し、FIP基準単価が高額であればあるほど、プレミアム単価は上がる。

伊藤正裕社長は、「脱炭素社会を実現しなければならないにもかかわらず、系統制約で再エネが無駄に捨てられている。この社会課題を解決し得る点においてFIP活用の今回の事業モデルは意義が大きい。現行のFIPルールが変わらないことを願う」としたうえで、「蓄電設備の追加投資で資金調達が難しい事業者にはグループのリース会社を通じてサポートするつもりだ」と方針を語った。

今回のような買取りサービスが普及すれば、あるいは出力抑制問題は解消に向かうかもしれない。7兆円に及ぶ系統増強費を血税で捻出するよりも遥かに経済合理的と言えるのではないか。

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