中国は16GWの市場を失うのか
EU、中国産パネルに対し11.8%の暫定制裁へ
落としどころが見えない交渉のゆくえ
その裏にはやはり、中国勢の財務状態がある。多くの企業が2年近くも赤字を流し、利益を生みだせていない。なかには売上原価が売上高を超える。つまり、完全な逆ザヤ状態に陥ったメーカーもいるほどだ。
では、賽を投げられた中国側はどう交渉に臨むのか。成長性が鈍化する欧州とはいえ、EU加盟27ヶ国の12年導入量は16GW。かつての勢いが消えたドイツにしても、13年4月までの導入量が1.1GWを数えた。このマーケットを失って痛いはずがない。
大手モジュールメーカーの13年Q1決算を見ても、欧州地域への依存度の高さが解る。たとえ11.8%といえども課税されれば、信用不安が急速に拡がった彼らだ。そう長くは持ち堪えられないのではないか。
真っ先に挙げられるのが、金融機関による融資限度枠の引き下げ、そのトリガーを引いたサンテックパワーだろう。彼らの中核子会社だった無錫サンテックパワーの債権者集会が5月22日、開催されたが、その席上で、負債額が173億9600万元(約2900億円)にのぼると報告されたのだ。
債権者数は529人、このうち国家開発銀行や中国銀行、スタンダード・チャータード銀行などの金融機関12行が債務申請をしたという。
また債権者リストのなかには、OCIの8億4300万ドル、へムロック・セミコンダクター・グループ6550万ドルのほか、ハネウェルや三菱商事の名前もあったという。
中国現地では12月20日までに、再建計画が提出されなければ、法的処理の可能性すら示唆されている。
だがその一方で、欧州委員会の決定を予期してか、レネソーラのように南アフリカやインドといった中国外にOEM生産を求め、準備を着々と進めるメーカーも多い。
彼らに共通するのが、緩やかな脱〝欧州〟だ。だが、完全なる欧州シフトが完成したそのとき、誰がEUへモジュールを提供するのだろうか。
経済損失という諸刃の剣を抱え、欧州委員会と中国側との折衝は続く。
最後に欧州委員会はその声明文を「反補助金関税の調査も同時に進めており、もし疑惑が確証に変われば、8月7日より暫定課税されるべきだ」という言葉で結んでいる。