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鹿児島で大型蓄電池が全焼

相次ぎLG製蓄電池が発火

鹿児島県内の蓄電池併設型メガソーラーで火災事故が発生した。蓄電池が爆発し、消防隊員4人が負傷した。横浜市内の小学校で起きた発火事故に続き、またもや韓・LG製蓄電池が発火した。(本誌・川副暁優、土屋賢太)

火災事故が発生した鹿児島県伊佐市内の6号機高柳発電所

2024年3月27日18時過ぎ、鹿児島県伊佐市内の太陽光発電所で火災事故が発生した。併設されていた蓄電設備の建屋から白煙が上がり、近隣の住民が消防署に通報、駆けつけた消防隊員が煙を排出する作業にあたったところ、爆発し、消防隊員4人が火傷を負った。鎮火まで20時間以上かかり、蓄電容量6400kWhの大型蓄電設備は全焼した。

火災事故が起きたのは、直流出力1.2MW、交流出力1MWの『6号機高柳発電所』。韓・LG化学(現LGエナジーソリューション)製の三元系リチウムイオン蓄電池が併設されており、昼間に発電した電力を夕方から夜間に送電する蓄電池併設型の発電所として17年2月に稼働していた。

消火作業が難航したのには、電気火災特有の問題があったようだ。伊佐湧水消防組合によると、蓄電設備への放水には、短絡による爆発や感電の恐れがあり、自然に鎮火するまで待機せざるを得なかったという。

ただ、蓄電池の安全性に詳しい横浜国立大学大学院工学研究院機能の創生部門の藪内直明教授は、「消火用の水を十分確保できれば、蓄電池への放水による感電の危険性は低い。発火した蓄電池の消火活動については適切な方法を再検討し、周知する必要がある」と指摘する。

事故発生後、消防隊や警察、経済産業省らが原因を究明しているが、4月21日現在、発火の原因は明らかになっていない。

火災事故が起きた発電所を運営するハヤシエネルギーシステムの林隆秀社長は、「多くの方々に多大な迷惑をかけ、申し訳ない」としたうえで、「太陽光パネルは無事だったが、夕方18時から24時までの間に系統に電力を流すという条件で九州電力と系統連系の契約を結んだので、売電を継続するには蓄電設備を再び設置しなければならない。事故の原因究明後、一刻も早く蓄電設備を導入して事業を再開したい」と前を向く。

ただ、ハヤシエネルギーシステムにとって損失は大きい。発電所の総建設費は6億円規模だから、7年程度のFIT売電収入では半分程度しか初期投資を回収していないのだ。蓄電設備を建て替えて事業を再開するとしても、3~4億円規模の追加費用がかかるため、FIT売電単価36円で残りの期間、売電を継続しても、採算が合うかどうかは分からないはずである。

では、蓄電池メーカーのLGエナジーは今回の火災事故にどう対応するのだろうか。今のところ事故の公表を控えているようだが、それでは疑念は膨らむばかりだろう。現に今回発火したLGエナジーの三元系リチウムイオン蓄電池は、23年12月20日に横浜市内の小学校で発火した蓄電設備にも使われており、同じ蓄電池がわずか数ヵ月間で2度も発火したのだ。

しかも、LGエナジーはEV(電気自動車)用の三元系リチウムイオン蓄電池で欠陥品を出荷した過去もある。米・GM(ゼネラル・モーターズ)のEVで複数の火災事故が起こり、GMがEVのリコール(回収・無償修理)を実施した際、GMはLGの工場の蓄電池セル製造過程に欠陥があり、充電中に蓄電池が発火する危険性があることを公表。21年10月には、リコール関連費用20億米ドル(約2280億円)のうち19億米ドル(約2166億円)をLGが負担することで合意したと発表している。

ともあれ、リチウムイオン蓄電池には種類がいくつかある。材料にニッケルとコバルト、マンガンを使う三元系リチウムイオン蓄電池は主流だが、熱暴走が起こる可能性があるため、近年、定置型蓄電設備では熱暴走が生じ難いリン酸鉄系リチウムイオン蓄電池が使われるようになった。一方で、粘土状の半固体電解質を使う半固体リチウムイオン蓄電池や固体電解質を使う全固体リチウムイオン蓄電池の開発も進んでいる。蓄電設備の利用が広がるなか、安全対策は急務だ。

LG製の三元系リチウムイオン蓄電池が併設されていた。大型蓄電池が全焼した

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