広島・福山でモジュール新工場建設
ウエストHD、中国系技術ベンチャーと合弁年産200MW
広島県に新しい太陽電池モジュール工場が立ち上がる。建設するのは、中国上海市に営業拠点を構える技術ベンチャー、ユナイテッド・クリスタル・テクノロジー(=UCT、方朋CEO)と、EPC(設計・調達・建設)国内大手のウエストホールディングス(吉川隆会長)。年産能力は200MWで、両社は年内にも新工場の運営会社、『UCTソーラー』(仮称)を設立する。来春を目途に生産を本格化する予定だ。
UCTソーラーの資本金は3億円を予定しており、出資比率は現在協議中であるが、UCTが81%以上、ウエストは19%以下の連結対象外となる模様。
拠点は、広島県福山市神辺町旭丘の石井表記本社内。石井表記の工場を活用する。今年12月から生産設備を導入。早ければ14年3月にも生産を開始し、早期に年産200MW体制に引き上げる計画だ。
UCTの取引ルートを活用して、セルやその他の部材は国内外から仕入れる。UCTソーラーで単結晶シリコン型モジュールと多結晶シリコン型モジュールを組み立て、ウエストHDが『テラス』という独自ブランドで商品化、国内の太陽光発電市場へ拡販する。
新工場には、一般のモジュール工場とは異なる新しいモデルでの生産方式を導入した。
そもそもUCTは、セルやモジュールを自ら製造するのではなく、他のメーカーへの委託製造によって製品化するファブレスメーカーである。最大の強みは、設計技術や品質管理といったセル・モジュールの製造ノウハウや、封止材やバックシートなどの材料開発の知見があるうえ、エンドユーザーの要求を汲み取り、それを製品に反映できること。
今回の新工場では、このUCTの生産モデルを導入し、日本のニーズに合った日本仕様のモジュールを生産する。従来のモジュール生産ラインではなく、検査工程を充実させ、設計、開発、品質管理に重点を置く。
UCTの方CEOは、「製品コンセプトは日本仕様。まず日本製モジュール並みに高品質であること。モジュールの変換効率は単結晶が17.5%、多結晶は17%と高い。そしてコスト。双方とも中国製品並みの競争力のある価格帯で売り出す」という。
UCTの生産モデルは、ウエストHDの方針と合致したようだ。ウエストHDの吉川会長は提携を決めた理由をこう語った。
「顧客のニーズに応える。これは事業の基本姿勢で重要なこと。いま日本のユーザーは国産志向が強く品質に関心が高いから、当社はその要求に素直に応えたい。ただニーズを製品に反映できるメーカーは意外と少ない。
UCTさんはその課題に着目し、新しいモデルを編み出した。これは当社の方針と合う。この提携を機に有効な関係を築きたい」。UCTとウエストHDは、今年8月からモジュールの取引を開始している。11月には取扱量が30MWを超えた。新工場での生産が本格化すれば、両社の取引量はさらに増える模様だ。
台エバーソルとの関係解消
ウエストHDがUCTとの合弁事業を始めたのは、台湾のウエハメーカー、エバーソルとの関係が背景にある。
ウエストHDは、12年3月、エバーソルとの共同出資でイーソーラーを設立。愛媛県松山市西垣生町でモジュールの生産を始めた。イーソーラーの当初の資本金は6億7千万円で、出資比率はエバーソル61%、ウエストHD39%だった。合弁事業を始めるにあたって、両社は協定書を交わした。イーソーラーが生産するモジュールの品質やコストなどを定め、それを条件にウエストHDがモジュールを調達し販売するという内容だった。
しかし、取引開始後まもなくイーソーラーの製品に問題が生じた。ウエストHDの販売子会社からイーソーラーに改善を求めたが受け入れられず、今年4月に取引を中止。さらに経営方針の相違からウエストHDはエバーソルに合弁解消の意向を告げ、株の買取りを要求した。その後、両社の交渉は一旦決裂したが、現在改めて協議を再開している。
エバーソルの株主で台湾のメーカー関係者は、「エバーソルの経営状態が悪化している。日本の子会社(イーソーラー)での新規事業が頼みの綱だったが…」と不安を滲ませた。
ウエストHDにとってはエバーソルに株を売り渡して出資金を回収したい。だが財務が悪化しているエバーソルが応じられるのか。収束にはまだ時間がかかりそうだ。