順風光電、無錫サンテックパワー買収に名乗り
買収予想額約160億円
ヘビが象を飲み込む──。
今年3月、経営破綻した無錫サンテックパワーの買収先に順風光電国際(SF-PV : Shungfeng Photovoltaic International)が名乗りを上げた。債権者である中国銀行、中国建設銀行などの銀行団が同意すれば、売上規模10億元(約160億円)たらずのSF-PVが、無錫サンテックパワーを手中に収めることになる。
いまから1ヶ月ほどまえの9月20日、無錫サンテックパワーの身売り先を決める最終入札のため、インリー・グリーンエナジー、無錫市政府傘下の投資会社、無錫市国連発展集団公司とGCLポリー・エナジー連合体、トリナ・ソーラー、北京普天新能源、中国西電が無錫サンテックパワー本部を訪れていた。
この時点までは、いずれも国営である北京普天新能源と中国西電2社が本命視されていた。だが、入札直前になって突如、無錫市政府側から入札延期が発表される。新たな入札参加者が現れたというのだ。その場で10日間の延期が申し伝えられたが、結局、10日後になっても開かれず、10月8日になってようやく開催されることになった。
だが蓋を開けてみれば、最終入札に残ったのはGCL&無錫国連連合体と順風光電2社のみ。そして買収交渉権は順風光電が手にすることとなった。とはいえ、無錫サンテックの負債総額は107億元、日本円にして約1710億円にのぼる。
107億元の全額返済が無錫市および債権者委員会による応札条件であり、順風光電はさらに無錫サンテックの株式30%の取得を表明している。
順風光電側は我々の取材に対し、「買収総額は恐らく10〜11億元になる見込みだ。無錫サンテックの残りの株式70%については負債返済後の取得になる」とコメント。ただし、現時点では具体的な再建案は開示できないとした。
無錫サンテックのメインバンクであった中国銀行や中国建設銀行、中国工商銀行、中国農業銀行などが、「我々が提示する買収案に対し合意するかどうかだ。買収時期も未定である」とも語った。
ただ今回の入札結果について、市場関係者からは「ヘビが象を飲み込もうとしている」という声がすでに聞こえてくる。実際、順風光電の12年売上高は買収予想額と同じ10億元しかない。市況の低下と反ダンピング措置により、ご多分にもれず最終利益は1.8億元の赤字に転落した。生産能力もセル420MW、モジュール200MWという規模感だ。
だが順風光電の狙いはここにある。セル製造だけに甘んじていたら、成長戦略を描けない。かつての世界最大手サンテックパワー、その70〜80%もの生産を一手に担ったとされる無錫サンテックを買収することによって、モジュール分野での事業領域を拡げ、世界に打ってでる。これが順風の思惑だろう。
一方、経営再建中のサンテックパワーホールディングスは手詰まり感が否めない。9月にはCEOとCFO兼務していたデビット・キング氏が去った。優良売却資産だと目されていたイタリアの太陽光発電所も、補助金等の不正取得によって差し押さえられてしまった。
具体的な再建策が見出せないなかでの、今回の買収騒ぎだけに、順風光電がサンテックパワーホールディングスにまで、触手を伸ばすのではないかとすら噂されている。