経産省、認定済み案件の実態調査 開始へ
未着工、建設遅延の原因追求
経済産業省は9月13日、設備認定を取得した太陽光発電プロジェクトを対象に実態調査に踏み切る意向を示した。調査の開始日は明かしていないが、まもなく実施する模様だ。2012年7月1日から13年5月末までの設備認定量は20.9GWにのぼったが、このうち運転開始したのは約14%の2.9GW。設備認定量と稼動設備量との間にギャップが生じたため、実態を調査して原因を探る。
現行の設備認定ルールでは、出力10kW以上の太陽光発電設備は、設備認定時の出力と比べて20%以上の出力変更があった場合か、あるいはメンテナンス体制を変更した場合に限って、事実上認定を取りなおさなければならない。
しかし、その他の変更は、軽微変更届出を提出すればよく、太陽電池モジュールの型式変更など、設備のコスト構造が大幅に変わっても、認定時の買取り価格が維持される。
これには、特別高圧線に接続する大規模プロジェクトを遂行しやすいという大きなメリットがある。経産省から設備認定を受け、電力会社に特定契約の申請書を提出しさえすれば、工期が年度を跨いでも前年度の買取り価格が適用されるからだ。
太陽光発電所を完成させて系統連系した時点の買取り価格が適用される欧州のルールと比べると、遥かに事業計画が立てやすく、金融機関からの融資も受けやすい。実際、日本のルールは、金融機関によるファイナンスの組成に配慮して設計されている。
ただ、建設を急ぐ欧州の発電事業者と比べれば、日本の発電事業者には余裕がある。日本の太陽光発電の導入スピードが欧州に比べて遅く、設備認定量と運転開始した設備容量とに、ある程度のギャップが生じるのは致し方ないのである。
しかしながら、このルールを不当に利用しようとするものが現れた。設備認定を取得したにもかかわらず、モジュール価格の値下がりを見越して意図的に着工を遅らせ、高利回りの売電事業を始めようとするものが出てきた。いわゆる買取り価格の〝空枠取り〟である。
これには経産省も何らかの対策を講じなければならなくなった。そもそもFIT(全量買取り式の固定価格買取り制度)とは、国民負担のうえに成り立つ制度である。そして買取り価格は、設備の費用に応じて決められる原価積み上げ式。
したがってFITを活用した売電事業を行なうものは、〝売電権〟を得た時点と、太陽光発電所の設置費が確定した時点とを極力一致させなければならないというルールを守る必要がある。部材が逼迫して手に入らないなどの正当な理由がない限り、速やかに着工するか、廃止届けを提出しなければルール違反になるのである。
経産省資源エネルギー庁の村上敬亮新エネルギー対策課長は、「国民負担を考慮すれば買取り価格の〝空枠取り〟は看過できない。厳しい措置を講じざるを得ない。ただ悪質な事業者が実際にどれくらい存在するのか分からないし、建設が遅れている理由はほかにあるのかもしれない。そこで実態調査を実施して、状況を把握し、原因を明らかにしようということだ」としている。