堀内電気、FIT36円メガソーラーにFIP転+蓄電池導入
総工費4.2億円を3年回収想定
福岡県のEPC企業、堀内電気が自社のメガソーラーに蓄電設備を併設する。FITをFIPに切り替えて収入を増やし、追加投資4.2億円を3年で回収する想定だ。(本誌・川副暁優)
堀内電気(福岡市、堀内重夫社長)は2024年7月、熊本県大津町内で運営している直流出力2925kW、交流出力1980kWの太陽光発電所に蓄電設備を併設することを明かした。蓄電容量5848kWhの中・ジンコソーラー製蓄電池モジュールと、出力1980kWの中・NRエレクトリック製PCS(パワーコンディショナ)を採用。近計システムのEMS(エネルギー管理システム)を導入し、東芝エネルギーシステムズにアグリゲーションなどの運用業務を委託する。
蓄電設備の導入費4.2億円を伊予銀行のプロジェクトファイナンスで調達し、25年2月の完工を目指し、このほど着工した。蓄電設備の併設に際しては、FITをFIP(フィード・イン・プレミアム制度)に切り替え、経済産業省の『令和5年度補正予算・再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業・単年度事業』を活用。24年6月18日に採択され、総工費の2分の1の補助金を受給する。
堀内社長は「太陽光発電所は、13年度内に売電単価36円のFIT案件として開発許可を得たが、九州電力による変電所の増設を待たなければならず、稼働は20年6月末までずれ込んだ」としたうえで、「稼働当初から出力抑制がかかり、いまでは初期のシミュレーションと比べて売電収入は80%まで落ちたので、蓄電設備の活用を検討し、今回の投資を決めた」という。
もっとも、春や秋の日中にJEPX(日本卸電力取引所)価格が0.01円/kWhまで下落する九州では、蓄電設備を併設すれば、夕方以降の価格上昇時にJEPXに電力を販売でき、売電収入を増やすことができる。
特に、FIPを活用すれば、0.01円の時間帯にJEPXに電力を卸す事業者には交付されないFIPプレミアムが、0.01円以外の時間帯に電力を卸した事業者に割りつけられるため、蓄電設備を併設する発電事業者は収入を大幅に増やすことができるのだ。
堀内電気も、このFIPの仕組みを活用する。実際、アグリゲータの協力のもと23年度のJEPXの動向から蓄電設備の投資回収期間を試算しており、補助金分を除いた2億円強を3年程で回収する想定である。
堀内社長は、「JEPXだけでなく、需給調整市場の2次調整力取引も活用して早期の投資回収を図りたい。そして当社の実績値をもとに、今後は蓄電併設モデルを他の発電事業者にも提案していくつもりだ」と方針を語った。
これを機に、FIP転+蓄電設備併設が広がれば、あるいは九州の出力抑制問題は解消に向かうかもしれない。今後の動向が注目される。