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久慈地域エネルギー、太陽光電力の調達開始 再エネ100%の新電力料金メニューに活用

自治体新電力会社の久慈地域エネルギーはこのほど、〝非FIT〟太陽光発電所からの再エネ電力調達を始めた。太陽光発電由来の再エネ100%の電力料金メニューに活用し、地域脱炭素を推進していく構えだ。(本誌・楓崇志)

久慈地域エネルギー(岩手県久慈市、若林治男社長)はこのほど、東芝エネルギーシステムズ(=東芝ESS)と、〝非FIT〟の低圧太陽光発電所が生み出す再生可能エネルギー電力を調達する契約を締結した。

具体的には、FIP(フィード・イン・プレミアム制度)を活用した東北地方の15ヵ所計750kWの新設発電所とFIPを活用しない20ヵ所約1MWの非FITの既設発電所の環境価値付き再エネ電力を東芝ESSから久慈地域エネルギーが固定価格で買取る。契約期間は20年で、東芝ESSはアグリゲータとして発電所の計画値同時同量業務の代行やインバランスリスクを負う。

久慈地域エネルギーは調達した再エネ電力を新たに商品化した再エネ100%の電力料金メニュー『アマリングリーンでんきSPプラン』に活用する。非FIT太陽光発電所が生み出す再エネ価値を非化石証書として割り当てながら太陽光発電だけで再エネ100%の電力販売を実現する。

対象の太陽光発電所は2024年6月末から順次運転を開始しており、久慈地域エネルギーは8月中旬以降、新メニューのもとで電力販売を始める見通しだ。

同社営業部の勝田雅幸部長は、「まずは調達予定の再エネ電力量内で小売りする。すでに高圧受電の顧客と3件契約し、低圧受電の顧客とも約20件契約を結べる見込みだ。既存の電力価格と同等以下での電力販売を目指し、今後は家庭向けにも拡げていきたい」と語る。

同社は、久慈市内の地元企業が17年10月に設立した地域新電力会社である。18年3月には久慈市からの資本参加を受け、岩手県内初の自治体新電力会社となった。かねてより県営の水力発電所から再エネ電力を調達してきたが、今回初めて非FIT太陽光発電所から再エネ電力を調達した。

久慈市は、市内の山形町全域が脱炭素先行地域に選定されるなど地域脱炭素を推進しており、同社も積極的に支援している。脱炭素先行地域の共同提案者に名を連ね、地域内でオフサイトPPA(電力売買契約)やオンサイトPPAの事業化を進めている。

24年7月には、岩手銀行子会社で再エネ発電事業を手掛けるマノルダいわてが久慈地域エネルギーと連携し、久慈市内に建設する3ヵ所の非FIT太陽光発電所の再エネ電力を地域の事業者や家庭に供給する計画を発表。久慈地域エネルギーは新電力会社として電力を買取り、地域に小売りする。発電所は25年1月に稼働する予定だ。

地域脱炭素の実現は簡単ではないが、同社のような地域新電力会社が果たせる役割は大きい。こうした地域主体の取り組みを進めていくことが地域脱炭素の実現に近づくに違いない。勝田部長は、「先行地域以外も含め、今後も地域脱炭素を推進していきたい」と意気込む。

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