独SMA、日本市場でパワコン拡販
鹿児島70MWの一括受注で躍進
パワーコンディショナ世界最大手の独SMAソーラー・テクノロジー(ピエールパスカル・ウーボンCEO)が、日本市場で販路を拡げている。NTTファシリティーズが運営する千葉県佐倉市の太陽光発電所に大型パワーコンディショナを納入したのを皮切りに営業を強化。京セラなどが鹿児島市で建設している国内最大級のメガソーラーのパワーコンディショナを全量受注した。SMAは、発電規模に換算してすでに200MWを超える受注を抱えている模様。パワーコンディショナ市場は国内勢の牙城だったが、今後はグローバル化が加速しそうだ。
SMAが国内のメガソーラー市場へ販売するのは、定格出力500kWの大型パワーコンディショナ『サニー・セントラル』。屋外設置型である点が特徴だ。
国内製品の多くは、パワーコンディショナをコンテナの内部に設置し、そこに冷却用の空調設備を組み込んでいるが、同社の製品はこれが不要。筐体内で電気機器内臓の密閉エリアと、外気取り込み吸気エリアを隔離する独自の放熱技術によって、空調設備の冷却機能を代替する仕組みを施した。それだけに、消費電力を抑え、維持コストを低減できる。
また、塩害にも耐え得る堅牢なつくりで、様々な環境で使用できるとされ、電力変換効率は最大98.6%と世界最高水準。日本仕様に合わせて、直流入力電圧範囲はDC600Vである。製品のこのような特徴が、国内のEPC(設計・調達・建設)やユーザーに浸透し、評価が高まったと思われる。
ただ、パワーコンディショナは、太陽電池モジュールとは事情が異なり、日本の製品規格は厳しい。海外勢にとって参入障壁の高い市場である。そこへSMAが分け入ることができたのは、やはり鹿児島市七ツ島の大型プロジェクトで全量受注したことが大きい。
今年9月に着工した同プロジェクトは、出力70MWと国内最大級。太陽電池モジュール大手の京セラを筆頭に、KDDI、地権者のIHI、電気工事の九電工、スーパーゼネコンの竹中工務店、ファイナンスで支援する京都銀行と鹿児島銀行の計7社が参画した。共同出資でIPP(独立系発電)事業会社、鹿児島メガソーラー発電を立ち上げ、みずほコーポレート銀行を主体にプロジェクトファイナンスを組成して、総投資額270億円の巨費を調達する。それだけに、太陽光発電業界で多くの関心を集めた。
この一大プロジェクトにSMAの日本法人、エス・エム・エイ・ジャパン(村上吉見社長)が、出力500kWの大型パワーコンディショナを140台納入することになったのだ。この実績はいわば〝お墨付き〟となり、電力会社との系統連系協議においても有利に働くのはいうまでもない。
SMAは日本仕様の製品拡充を急ぎ、来春にも大型パワーコンディショナの新製品を発表する予定である。SMAはトータルの年産能力が1万1500MWで、昨年は7600MW出荷した。世界の生産シェアは現在30%を保有しているとされている。世界最大手の攻勢は、国内勢にとって脅威となるに違いない。